海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2014.02.24 2014:02:24:19:21:20

読まずに当てよう、本屋大賞。

 2014年は大変な幕開けでした。

 

 私ごとですが一月下旬、父が他界しました。通常ならこうした私ごとはブログには書かないのですが、多くの人に知って貰いたいことがあったので、筆を執りました。

 

 父は年末に突然倒れ、救急病院を経て意識不明で母校の千葉大学医学部付属病院ICUにお世話になりました。入院時に脳死状態になり他界するまでの一ヶ月弱、ICUのスタッフの方々に一生懸命看ていただいたことをどうしてもお伝えしたかったのです。何か御礼したかったのですが、そうしたことは今は厳しく対応され、受け取ってもらえないということを伝え聞いていました。ですので、こうして多くの人に医療現場の素晴らしさを知っていただくことで、感謝の意に変えたいと思います。

 

 細かいところまで気配りをしていただき、とても安心できました。私が外科医をやっていた三十年前とは違い、病状説明も丁寧で患者サイドに立ったものでした。そのやり方は付け焼き刃とは思えず、常にそうした態度で患者に対応しているのだと感じられました。

 

 日本の医療はきわめて良質で(もちろん、中には例外もありますが概ねということで)世界に誇るべきものだ、と私はかねてから主張し続けてきましたが、それが実体験で裏付けられたことを嬉しく感じました。また母校がそうして誇れるような医療をしていることも誇らしく思えました。そうした良質の医療を守れるのは、市民のみなさんのこころの支援だけなのです。是非、こうした火を絶やさないでもらいたいなあ、と思ったものでした。

 

 以上が私ごとながら、このことを書こうと思った理由です。

 

 

 さて先日、第12回『このミステリーがすごい!』大賞の受賞式が行われましたが、それに先立ち、画期的な会が先日開催されたので、参加してきました。宝島三賞(『このミステリーがすごい!』大賞、『このライトノベルがすごい!』大賞、日本ラブストーリー大賞)の受賞者に対し、出版界や執筆に関する基礎的事項を講義しようという、おそらくこれまで例をみない会です。

 

 書評家の茶木則雄さんが提案され、私も協力させていただきました。私は文章技術を講演できるような作家ではないので、質疑応答という形にしましたが、とても盛り上がりました。特に茶木さんと私の、創作に対する考え方が、最初は正反対のように聞こえたのに、議論しているうちに実は同じことを言っている裏表なのだ、ということがわかったのはとても勉強になりました。

 

「マーケティングして作品を書くべきだ」という茶木さんと、「書きたいものを書きたいように書くのが作家だ」と主張する私の意見は正反対に聞こえ、激しい議論になりました。けれども茶木さんが「マーケティングして考えて書け」とおっしゃるのは、そうすれば作品が出版されやすいですよということであり、私の「書きたいことを書きたいように書けばいい」という言葉には、「書きたいように書いて、それが受け入れられなかった時は、誰も恨まず静かに自滅せよ」という覚悟があるわけです。

 

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