海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2014.04.03 2014:04:03:16:49:51

自由を滅ぼすのは常に、非寛容と独善である。

 本屋大賞を批判した私の文章が、本屋大賞に関心のある人たちの間でかなりツイートされたのを認識しました。予想通りの反応もありましたが、想像していた最悪の状態にはならず、良識ある人たちも多いのだなあ、と胸をなで下ろしています。


 最初に申し上げますが、海堂尊は弱い者イジメは致しません。私が公開の場で批判し、攻撃する相手は、「勘違いしている強者」と「自己反省しないシステム」だけです。

 東大の某教授を批判したり、法医学会上層部を批判するのは前者であり、厚生労働官僚や本屋大賞を批判する場合は後者になります。

 つまり本屋大賞とは、私が批判するに値する、権威であり強者になったということです。
 強者とは現実に決定権を持つ人のことで、書店員は書店の店頭展開を決定できるから、現場では強者なんです。

 だから一作家が、「書店員」という集合体のやっている企画に抗議するのは蟷螂の斧のようなものです。もっとも私がかつてこのブログでやっていたのは、一病理医が病理学会のお偉いさんに噛みついたり、一医師が厚生労働省に噛みついたりと、無謀さで言えばもっと難儀なことでしたから、まあそれほどのストレスではありませんが。


 ツイートを見ると予想通り、感情的なコメントが先行しました。特に「うつつをぬかしている」という部分だけ取り上げ、揶揄されたのは予想外でした。ですが、そのような枠組でのレスポンスがあるだろうというのは想定内でした。

 要するに肝心の部分に答えず、枝葉をあげつらって論点をずらす、という手法です。
 そしてそれが、私がツイッターをやらない理由です。

 140字という枠組では、論旨が切り取られ、譬え話や誇張部分だけ取り上げられ、あたかもそれが文意であるかのように、歪曲される恐れがあるからです。


 こうした「すり替え」を防ぐため、私の主張を簡略に箇条書きにします。

① 私は本屋大賞は嫌いだが、否定はしない。むしろ面白い試みだと思っている。

② 書店が「本屋さんが一番売りたい本」というキャッチコピーを公然と使うのを見ると作家として不愉快だし、書店の本道にも外れることなので変えて欲しい。

③ たとえ面白い企画でも、長期的に展開されると変質し、悪影響の方が大きくなる。


 私の要望は、「せめてコピーは変えてほしい」の一点だけなのです。残りは、私が本屋大賞をどう見ているかという個人的な感想と、社会的な影響がどうなのかという分析であり、それに対し、「ひどい」とか「そんな人だったんだ」などという感情的な発言をするのは少々的外れかと。

 ツイッターという140文字の水たまり文化では、往々にしてこうした「切り取り」による「すり替え」が起こりがちです。今回、炎上せずに済んだのは、ツイッターに引用された私の「暴言」を知った人も、原文を確認し、私の文章の「真意」を読み取ってくれたからに他なりません。そして私の本意を読み取れた人がいる以上、それは私の文章が未熟なせいではなく、読み取れなかった人の読解能力が低いということになります。


 ちなみにツイッターにあった海堂批判であまりに的外れな部分は、さすがに反論させていただきましょう。

「海堂の文章は、本屋大賞の候補にしてもらえないやっかみで、私怨にしかみえない」

 これにはきっぱり反論します。私は本屋大賞がほしいと思ったことは一度もありません。むしろ最初から反発していました。

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