海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2014.02.24 2014:02:24:19:21:20

読まずに当てよう、本屋大賞。

 でも『64』は「本屋さんが一番売りたい本」ではなかったために普通の本と同じように平台から姿を消したのです。二位ですらこうした扱いでは、私みたいに本屋大賞の候補にすらならない作家の作品は推して知るべしでしょう。

 

 私は、書店と書店員さんはとても好きで感謝もしています。でもコピーを変えようとしない様子を見ていると、もう勝手にすれば、という気分になります。きっとそういう作家は潜在的に多いと思います。ただ、作家も書店さんに冷たくあしらわれるのが怖くて言えないだけです。本屋大賞に関わっている書店員さんは、残念ながらそうした作家の気持ちを考える思い遣りがなく、デリカシーに欠けていると思います。本屋大賞は確実に、書店を愛してやまない作家を、書店アンチしてしまう仕組みなのかもしれません。

 

 

 大沢在昌先生の言葉によれば、「今、単行本で四万部、出版してもらえる作家はごく少数で二十人くらい、直木賞作家でも初版一万部の方がたくさんいる」(『売れる作家の全技術』・角川書店)のだそうです。本屋大賞がここまで権威になる前までは四万部作家が毎月、入れ替わり立ち替わり平台を占めていました。総数はおよそ三十人くらいだっったという印象でした。

 

 でも本屋大賞が権威になったここ二、三年はすっかり様変わりし、四万部作家は十名前後に激減したように思われます。その脇で本屋大賞受賞作だけが延々と五十万部、百万部を達成するようになりました。

 

 おまけに、私がデビューした九年前と比べると、文芸書のスペースは著しく減少し、四分の一になったというのが実感です。だから本屋大賞の相対増大比率は十倍くらいに感じられるのです。

 

 ちなみに私は、本屋大賞は嫌いですが、本屋さんは大好きです。ところが最近、声の大きい書店員さんが、本屋大賞嫌いの私のことを、本屋さん嫌いであるかのように喧伝しているのではないか、という雰囲気を店頭で感じるようになりました。

 

 また、一度本屋大賞候補になると、以後ずっと大手チェーン書店で優遇されるという特典がついてきます。それは書店員が選んだ作家は素晴らしいんだよ、ということを印象づけるために、その後の作品も優遇するわけです。こうして本屋大賞は栄え、小説は滅びていく道をたどるというわけです。

 

 

 そうしたことを検証するため、今年を含めた過去十一年の本屋大賞のデータを分析してみました。過去の候補作家と版元の実数も記載してみます(敬称略)。

 

 こうして見ると、本屋大賞の偏在傾向は一目瞭然です。

 

 

【候補になった版元】(☆は大賞受賞)

 

新潮社17☆☆☆ 講談社16☆☆ 文藝春秋14 角川書店11☆ 小学館11☆ 

幻冬舎6 集英社5 双葉社5☆ 中央公論新社4 朝日新聞3 東京創元社3 

河出書房新社3 光文社2☆ メディアワークス2 ポプラ社2 扶桑社1☆ 徳間書店1 ジャイブ1 太田出版1 毎日新聞社1 マガジンハウス1 筑摩書房1

産業編集センター1 

 

8回 ☆伊坂幸太郎  

4回 ☆小川洋子 ☆三浦しをん ☆百田尚樹 有川浩 万城目学 森見登美彦

3回 東野 圭吾

2回 ☆冲方丁 横山秀夫 重松清 西加奈子 宮部みゆき 吉田修一

   角田光代 桜庭一樹 和田竜 夏川草介 窪美澄  飯島和一 貴志祐介   

1回 ☆リリー・フランキー ☆佐藤多佳子 ☆湊かなえ ☆東川篤哉 ☆恩田陸 

  森絵都 石田衣良 よしもとばなな 福井晴敏 京極夏彦 矢作俊彦 荻原浩

  梨木香歩 絲山秋子 雫井脩介 市川拓司 奥田英朗 島本理生

  町田康 古川日出男 桂望実  劇団ひとり 三崎亜記 近藤史恵 金城一紀

  柳広司 池上永一 天童荒太 川上未映子 藤谷治

  村上春樹 奥泉光 梓崎優 高野和明 大島真寿美 中田永一 

  沼田まほかる 宮下奈都 三上延 原田マハ 中脇初枝 川村元気 山田宗樹

  伊藤計劃・円城塔 長岡弘樹 中村文則 岩城けい 辻村深月 いとうせいこう

  木皿泉 柚木麻子

 

 一回のみ選出の著者は51人。そのうち5冊が大賞を受賞しています。また4回以上選出されている作家は7名いて、うち4名が大賞を受賞しています。この7名は本屋大賞・神7は、書店公式ツイッターや書店展開でとても優遇されています。

 

 書店めぐりや書店公式ツイッターなどで確認してみてください。

 

 こうしたことを理解した後で、本屋大賞の中心となっている書店公式ツイッターなどを見ると、また本屋大賞が別の見え方がしてくると思いますよ。

 

 

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