海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2012.06.12 2012:06:12:10:39:02

死因究明関連法案が衆議院を通過した。法医学会の市民社会軽視も困ったものだ

 自分の専門分野である司法解剖すらきちんとできない法医学者が、自分の専門外であるAiに対して責任が取れる、きちんとした対応を出来るのでしょうか。

 

 実際、その関西のAiセンターでは、遺族が第三者にコンサルトしたいからAi情報を提供してほしいという依頼を、無下に断っています。結局、裁判になって情報を出させて、その鑑定がAi情報センターに依頼されてきたというわけです。

 

 法医学者がAiを仕切ると肝心の市民にAi情報が届かなくなるという実例が、この短い間に二例、立て続けに起こったわけです。こうした問題を、国会議員にも訴え続けましたが、彼らは、その訴えの本質を理解できなかったのか、あるいは自分たちの権益にとってそれがプラスにならないと思って無視したのか、その結果、あの法案が無修正で通ってしまったのでした。

 

 法医学分野とは三体腔を開けない未熟な解剖をしても、教授になれて教室を主宰し、学生を指導しているような、そんな分野でもあるのです。そんなだから、人材が集まらなくなってしまうのでしょう。

 

 繰り返しますが、これは事実です。

 

 そんな人たちがAi情報を仕切れば、市民の利益は失われてしまうでしょう。

 

 

 上記の法案を策定し、議論なく可決した国会議員は、勉強不足か、市民のためを思わず、法医学者の利益だけを考えていて、しかも自分がそうしたことをしているのだということにすら気づかない、残念な国民の代表だということが言えましょう。

 

 なぜなら、この法案に関わった議員は、私の指摘を知りながら、あえて無視して法案を通したことは間違いないからです。

 

 これは、一歩間違えば、検察ファッショを強めかねない、危険な立法だということは、最新刊『ほんとうの診断学』(新潮選書)の中でも、指摘してあります。こうした系列の立法がなされるだろうという予見を、この法律が成立するはるか以前に指摘しているのです。

 

 

 でも、救いがないわけではありません。日本医師会の存在は希望です。

 

 7月1日、小児に関するAiの可能性についてというシンポジウムが日本医師会館で開催されます。政治家がダメでも、法医学者がダメでも、医学会がダメダメでも、医師会がある、という気分です。

 

 また、橋本岳・前衆議院議員は、議員当時にこの検討会に関係していたこともあり、がんがんと発言されています。そして現役の国会議員にも意見を言い、結果的に国会答弁を引き出したりしています。そして、条文には書いていないものの、立法した議員からの説明で、「遺族が要望したら、適切に情報を伝える」という言及も引き出しています。

 

 議員バッジがなくても、ここまでできるのです。議員バッジをつけている方々は、いったい何をしているのでしょう。

 

続きを読む 123456