海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2012.06.12 2012:06:12:10:39:02

死因究明関連法案が衆議院を通過した。法医学会の市民社会軽視も困ったものだ

 法医学者たちも、患者を優先する医療の理念を学ぶべき時がきています。一応、彼らも医師国家試験を合格した、医師の準構成員でもあるのですから、当然のことでしょう。

 

 

 情報公開に関して、法医学分野は大変遅れている。それどころか、そうした分野が促進されないように足を引っ張っているようにさえ見えます。

 

 そのとんでもない例が、先日ありました。

 

 Ai情報センターの代表理事、山本正二先生は、これまでもAi導入の推進力になった、日本のAi診断の第一人者ですが、その山本先生の身内の方が、群馬で孤独死されました。連休中に亡くなったのですが、発見されたのは連休明けでした。

 

 当然、死因不明の異状死です。そこで、山本先生はAiを実施してもらった方がいい、と親族にお伝えし、群馬大学AiセンターでAiが実施されました。その結果、解剖は行われなかったということでした。たぶん、事件性がないと判断されたのでしょう。

 

 ところが、その画像データと診断報告を山本先生が群馬大学Aiセンターに教えてほしいと依頼したところ、答えはノーでした。何と、警察に尋ねてくれ、というのです。

 

 そして山本先生は警察に尋ねたところ、画像を快く出してくれたのですが、その画像には診断はついていませんでした。

 

 

 これって、市民の目から見たら大変なサボタージュではないでしょうか。

 

 そもそもこの対応、社会システムとして矛盾があります。事件性がないと判断したから司法解剖が適用されなかったのですから、その段階で、Aiセンターは遺族に死因をきちんと説明すべきでした。また、画像を提供しながら診断レポートを添付しなかったということは、群馬大Aiセンターでは、法医学分野の「撮影すれども診断せず」という疑似Aiが実施されている可能性が疑われてしまいます。

 

 これでは、Aiの本義を外しており、なおかつそれは、市民社会の利益にならず、かつ、医学の本道すら外れています。Aiに対する診断レポートがついていて当然です。そして遺族にそうしたことを丁寧に説明することが医療の世界では常識です。でも法医学分野では、「医療の常識、法医の非常識」になってしまう。そしてそれは、市民社会にとって、害悪ですらあるのです。

 

 たとえば他の病院に転院する場合、画像を提供し、その診断を紹介状に書くというのは、医療現場の最低限の常識です。だからこの場合も、Aiセンターの担当医は、山本先生からの依頼に対しては、画像を提供し、診断をつけなければ、最低限の医療を行ったことになりませんし、そんなことが露わになれば、医療の質が低いと評価されても仕方がないでしょう。

 

続きを読む 123456