海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.05.26 2010:05:26:18:23:56

怒濤の一週間。ぜいぜい。

 日本医学会会長髙久史麿先生の名義で、厚生労働省政務官足立議員に事業の継続を要望する要望書が2月24日に提出されていますが、そもそもこの要望書は国民の付託を受けたものでなく、厚生労働省と学会上層部の方たちの要望にすぎません。こうしたことを異論や討論もせずに継続させようという姿勢は、角度を少し変えれば、「学会上層部と厚生労働省の癒着構造」と誤解されかねないものに、国民の眼には映ってしまうでしょう。
 年間1億7000万で5年間やって、たった100例しか解析できなかった制度を継続させることでメリットを受けるのは誰なのでしょうか。医療事故を疑った方が依頼しても、その半数に門前払いを喰らわせるシステムを日本中に蔓延させ、誰のメリットになるのでしょう。
 足立政務官が厚生労働省の担当部署に指令を出したのは、まさにモデル事業では継続困難なので、新しいシステムの模索を検討せよ、という明確な指示なのです。
 どちらにしても、足立政務官は、医療現場のことを熟知した政務官であり、こうした人が厚生労働省の意思決定の場にいるということは、医療適正化にとても重要なことです。7月の参議院選挙があるようですが、大分の方は、地元の国会議員がこうして日本全体のために働いているということを十分に評価してあげてほしいと思います。
 逆に言えば、厚生労働省で旧体制に属する人たちは、選挙まで、こうした指令を先延ばしで対応しようとするかもしれません。そうすれば、自分たちが手塩をかけて育て上げ、しかもほとんど機能しないけれどもお金だけはたっぷりかかるという、昔の厚生労働省官僚の好みのシステムであるモデル事業を堂々と継続できる可能性があるからです。
 でも国民のひとりとして、そのようなものを作らせてはならないと思います。なぜなら、そうしたことがシステムの土台になったとき、苦しむのは結局国民なのですから。
 モデル事業が物語ることは、解剖にお金を出しても、死因に不満を持っている遺族に対応できるのは半分しかならない、ということです。解剖主体にしたモデル事業は、もともと、解剖をしない症例にまったく対応できないという致命的欠陥を内包しています。だから普遍的に機能しないわけです。
 このままでは、学会上層部と厚生労働省担当部署が一緒になって、国に、市民のためではない仕組みを導入させることになりかねません。誤りだと思ったら、まず反省し、それから適切な方向転換をすることが必要とされています。そもそも、こうした意見を5年以上も訴え続け、法務省や内閣府からは公式に講演依頼を受けて説明している私を、医療安全推進室は、無視し続けて一度もヒヤリングさえしようとしません。それはAiベースの新しい死因究明制度の構築が、厚生労働省の方針転換を意味し、それは従来の手法が誤りだったということを認めなくてはならなくなるからではないでしょうか。そうでなければ、話を聞くということくらいは、簡単に行っていいのではないかと思います。もしも厚生労働省が国民のベネフィットを真剣に考えている組織であるならば。
 私は市民のため、そしていい医療をしている医療現場を守るために、Aiをベースにした死因究明制度を作った方がいい、と提案しているのです。

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