Aiに関する検討会を立ち上げる、という足立議員を初めとする政務三役の決定に、担当部署である医療安全推進室が即座に対応しなければ、その時は官僚が学会上層部と癒着し、自分たちの希望する流れを作ろうとすると批判されても仕方がないと思います。
ディスカッションの際、足立議員からモデル事業を継続したいという、学会上層部の要請書と内容総括のレジュメを拝見し、モデル事業の継続がうやむやに決められそうになった経緯を教えてもらい、驚きました。明らかな失敗企画を、外部から客観的に評価、検討させず、内輪で評価し都合いい報告書が仕立て上げられている。
5年間で約7億円の国費を投じて行った症例はたった105例。かかった経費は一体あたり94万円。資料では満足した遺族が80パーセント以上とありますが、これは数字のトリックです。モデル事業に依頼しようとした遺族は200名を超えていたのに、モデル事業で対応できたのが105例しかありません。つまり100名前後はモデル事業から門前払いを喰らっていた。すると満足率は80パーセントではなく、遺族の40パーセントにすぎなくなります(100分の80→200分の80へ変更になるので)。
しかも5年のモデル事業期間が終了し、そうした総括に対する議論も行なわないうちに、日本内科学会、日本外科学会、日本病理学会、日本法医学会の四団体の学会上層部の面々がやろうとしたことは、公費の受け皿になる一般財団法人を作ることでした。これって将来は、民主党が今まさに事業仕分けの対象としている天下り団体になりかねない性質を持つ組織になりかねません。こんな組織に公費を無批判に入れるなど、言語道断なのではないでしょうか。
組織の名前は「日本医療安全調査機構」。代表理事は髙久史麿・日本医学会会長。理事には、寺本民生・日本内科学会理事長、里見進・日本外科学会理事長、中園一郎・日本法医学会理事長、それから山口徹・日本内科学会。兼松隆之・日本外科学会監事と錚々たる人たちが名を連ねます。興味深いのは長村義之氏です。病理学会関連理事ですが、長村氏だけなぜか前理事長です。他の学会では現理事長が就任されているのに、病理学会はどうして前理事長なのでしょう。病理学会の現理事長の青笹先生はこうしたことをご存じで、あえて容認されたのでしょうか。どうして病理学会だけ前理事長なのか、病理学会会員に説明責任が生じますが、会員である私は寡聞にして聞いていません。他の外科学会、内科学会、法医学会がすべて現理事長なら、病理学会だけ前理事にするのは明らかに異端です。発言力が弱くなることは間違いない。変なの。
こうした錚々たる先生たちが理事に名を連ね、作り上げた調査機構に、オブザーバーとして厚生労働省という名前が記載されています。実態は、年間医療事故疑い案件の20例にのみ対応し、一体あたり100万円弱の費用をかけ、結果を返すのに10ヶ月以上かかるという、解剖主体のモデル事業の継続を謀るものにすぎない。この財団に落とされると目される費用が今年度も1億7000万というのだからびっくりです。この費用の使い方を徹底的に監査してみたいなあ、と思います。
ちなみに、もし放射線学会が中心となり提唱しているAiセンター構想であれば、一億七千万あれば5000体以上のAiをファーストスクリーニングとして実施できます。新しく創られようとしている「日本医療安全調査機構」の推奨する仕組みは1億7000万で年間20例弱しか施行できません。Aiならば5000体、モデル事業なら20体。いくらなんでも差がありすぎる。