海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.04.16 2010:04:16:15:08:03

ナニワの春は燃えている、法医学会のAiは割れている。

 法医学会において、Aiに対する姿勢は真っ二つにわれています。基本姿勢が一定しないのに、新たなシステム構築を提案できるわけがない。だから警察庁が主導する、「検死検討委員会」がいかに無意味か、よくおわかりでしょう。法医学会内部でも基本姿勢が分裂しているのです。法医学者だけを集めた検討会は有害なだけ、ましてや海外視察などもっての他、税金の無駄遣いです。法律が違う上に立脚するシステムを見ても、日本では意味がない。法医学者に法律改正を提言させるならまだわかりますが、そうでなければ海外を見てきた法医学者が自分たちに都合いい、ラクをしてカネを貰える部分だけ騒ぎ立てるだけのこと。前も言いましたが、異状死解剖率百パーセントの北欧諸国では、法医学者ひとりあたり年間三百五十体の解剖を行っている。一方、日本の記事を見ると、日本の法医学者の解剖数は年間百例そこそこです。海外に施設見学に行った法医学者から、そのような報告が自らなされると思いますか?
 これぞまさしく日本社会の悪弊「会議あれども議論なし」の象徴です。
 法医学者は、透明で迅速な診断を行う文化に欠けている部分がある。これは長年蓄積した制度疲労の澱なのです。この改革は法医学者自身にはできません。それはAiに対する姿勢を見ていればわかります。「千葉大法医方式」は従来の法医学の精神に則ったシステム構築で、仔細に検討すれば、そこには司法解剖同様、診断ミスや冤罪の要素が入り込む余地が残されたままになっています。
 冤罪の最大の原因は何でしょう。それは外部監査の不在です。司法解剖には外部監査ができない仕組みになっている。これは危険なシステムです。だが、それを法医学者の総意だとするのも早計です。よりよい社会導入を目指す、という良心がある方はおのずと「法医学会理事長方式」を考えだし、実施するからです。今、法医学会はふたつの異なるシステム提案をしています。「千葉大法医方式」か、「法医学会理事長方式」か。その選択を市民の目が見つめている。わかりやすい指標は、法医学教室が、「Ai」もしくは「Aiセンター」という用語を用いるかどうか。これで簡単に見分けられる。なぜなら「Aiセンター」とは、放射線科医が主導して全例読影し、その費用は医療費外から放射線科医に支払われる、というシステムの総称だからです。「千葉大法医方式」は「Ai」という用語は用いません。お金は法医学教室に入り、おこぼれを放射線科医にわける形だからです。たとえば千葉大法医学教室に入った、Aiがらみの研究費の金の流れを俯瞰すれば、何が一番の目的かは簡単にわかると思います。
 そしてそうなると外部監査もできないままなのです。
 秋田大法医学教室にCTが導入されるという記事がありましたが、「放射線科と連携し」という記事でした。この程度では、今のところ「千葉大法医方式」を踏襲していることは間違いありません。診断レベルが低く、透明性に乏しいシステムが、今社会に蔓延しつつあります。他に大分にも同様の導入のされ方がしようとしているというウワサを聞きました。
 この事業でCTを導入する法医学教室がAiに対しどう対応しているかをつまびらかにしていけば、その大学の法医学者の学術意識レベルと社会責任感の高さがわかります。大新聞は官報のようなものなので、出された情報を考えることなく垂れ流ししているようですね。
 千葉大には、放射線科が主導する「千葉大Aiセンター方式」と法医学教室が主張する「千葉大法医方式」が併存しています。「千葉大Aiセンター方式」では診断レポートが作成され、遺族に結果が伝えられます。「千葉大法医方式」は、診断レポートは作成されず、画像診断能力には疑問符がついている。市民のみなさん、自分の街にシステムを導入するとしたら、どちらを選びますか?
 法医学会理事長が選択したのは、「千葉大Aiセンター方式」です。この選択は法医学会内部では非難されるかもしれませんが、市民社会からは高く評価されるでしょう。

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