海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.02.16 2010:02:16:17:44:20

第4回 医療・医学における死亡時画像診断(Ai)活用に関する検討委員会

 死後画像診断は、専門医による詳細な検討が必要です。その際、そうした検討を解剖関連の人たちに任せてはならない。なぜならAiは画像診断ですから。画像診断の評価は専門家である画像診断医に依頼すべきです。当たり前の話です。先日、Ai学会が開催されましたがその中で、放射線専門医から「死後画像の読影は難しいので、是非研究していただいている先生方できちんとエビデンスを確立してほしい」という発言がありました。画像診断の専門医ですら誠意ある読影が難しいというのです。にもかかわらず、法医学分野では画像診断の素養に乏しい法医学者がAiを読影し、専門家の討議を経ることなく、公開の場で公式データとして発表しています。

 これって、自信過剰か恐れ知らずですよねえ。

 「死因診断率の比較」というスライドには「医師が捜査機関との連携なしでCTのみで死因を判定すると、従来方法以上に誤判定が発生する可能性もある。CTを用いる場合も、捜査機関と医師の連携が求められている」とあります。これは素晴らしい記述で、この精神をAiに当てはまれば、「Aiは医療現場の最終点で行い、その診断は医療従事者が行い、費用は医療費外から医療現場に支払われる」というAiプリンシプルが実現します。つまり岩瀬教授の発表の骨子を画像診断に当てはめると、法医学分野でもAiは放射線専門医にお願いする、というルールが成立するのです。

 難しい話ではなく、法医学者は専門外の死亡時画像診断を、専門家の放射線科医に委託するシステムを作ればいいだけのこと。法医学者から画像診断医に、「診断協力をお願いします」と頭を下げて依頼し、「つきましては費用はこのように支払わせていただきます」と通知し、そのルールについて医療現場と対等の議論をする公式の場を設定すること。この3点が必須でしょう。

 法医学者の先生は他人に頭を下げることが少なく、それが周囲との軋轢の原因になっているような印象が、個人的にはあります。

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