海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2010.02.16 2010:02:16:17:44:20

第4回 医療・医学における死亡時画像診断(Ai)活用に関する検討委員会

 発表者の持ち時間は三十分。議事進行で興味深かったのは座長の九州大学法医学教室の池田教授が、岩瀬教授がご多忙であることを告げた上で、岩瀬教授の発表後「次の演題を終えてから総合討議します」と差配したことです。久保田先生のスライドの調子がおかしく、その間岩瀬教授と討論することになり発表後10分近く、岩瀬教授との質疑応答が行われました。ようやく久保田先生のスライドが整い発表を始めた時、岩瀬教授は所用で久保田先生の発表をまったく聞かずに退席されました。

 振り返ると池田座長の差配では、岩瀬教授は久保田先生の発表中に姿を消すので、岩瀬教授の発表に対する議論ができないことになります。これではひょっとして法医学会として議論させたくなかったのかもしれない、という印象すら抱いてしまいます。法医の先生は「オープンな議論と中立的な外部からの検証」という姿勢にやや欠けるきらいがあり、これは現在の社会の要請に合いません。これでは一般市民の共感を得ることは難しい。それは現在の司法の姿勢と似ています。司法は間違えても当事者は謝罪しません。管家さん冤罪事件で、当時の検事がひとことも謝罪しなかったのはその象徴でしょう。

 事前配布された岩瀬先生の資料のタイトルは「法医学より見た死後CTの利点・欠点」、14枚あるスライドにはAiという単語は一度も出てきません。興味深いのは「千葉大法医学教室でのCT研究」というタイトルのスライド情報で、「司法解剖とCTを両方実施した症例が約 800例」と「行政検視でCT実施症例が約100例」だそうです。また9枚目が一番重要なスライドで「解剖前CT検査での解剖・CTの比較」という表です。これについては詳述します。

 追加資料で平成22年1月21日付けの日経新聞記事が配布されました。「解剖医の不足深刻」「一日4体、限界超えている」「犯罪死究明の体制強化・警察庁研究会29日に発足」という見出しが踊ります。岩手、青森両県から司法解剖を受託している岩手医大法医学教室の出羽教授の談話があって、09年の解剖が 175体と書いてあります。これを見ると地方の法医学者は本業の司法解剖だけで限界なのに、その上専門外の画像診断まで行うことは不可能だということが一読でわかります。

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