この発言は弁護士の中に、紛争を増やしたいと秘かに考えている方がいるという証拠であり、Aiの導入には訴訟を減らす社会的有用性がある、ということの傍証でもあります。
Aiを司法制度に組み込むと、市民社会にとって不利益が生じます。司法鑑定の一部に画像が組み込まれた場合、Aiも捜査情報になり情報開示制限を受け、結果、司法解剖やDNA鑑定と同様、情報開示速度が遅く、間違えた場合監査できないシステムになる。その時デメリットを蒙るのは、われわれ市民です。だからこそAiは医療領域に置けばいい。そうすれば中立的な司法監査も行なえるシステムが完成するのです。
Aiを嫌う領域は、透明性を嫌う領域です。それは今の社会の風潮ではいずれ糾弾されることでしょう。まさか市民の安全を司る司法がそのような体質であるはずはないですよね。
Aiに関しては、その専門学会である放射線学会専門医会にAi活用に関するワーキンググループ(WG)が立ち上がり、諸問題の検討を始めています。また、日本医師会でも三期目にあたるAi活用検討委員会が間もなく発足します。
一方、Aiを学術的に検討しなければならないと主張する病理学会や法医学会には、WG設立の気配さえありません。にもかかわらず、Aiの運営を専門外の病理医や法医学者に主導させたがる行政の意図は、Aiに対しフリーライド・システムを構築し、医療経済資源を搾取することにあるのでしょう。そうなるとまさに厚労省や財務省の思うつぼ、そして将来、市民社会と現場の臨床医にとって悲しむべき事態が出現してしまう。それは、Aiを解剖関連の人たちに主導させるという選択をした人たちによる人災として、末永く語り継がれることになるのです。
以上
2009.06.06 海堂尊
2009.06.06 海堂尊