池上先生は、好意的に書いたつもりとおっしゃるかもしれませんが、私の「ミステリー作品」を公式の媒体の書評で取り上げたことは一度もないように思います（見落としの可能性はあるので、もしもありましたら『このミス』編集部までお知らせください。この部分は追記して訂正します）。さらに池上先生がこの情報を得たのは、インタビュアーとしてのお仕事です。書評家が書評として作品を取り上げないのは、作品を評価していないからでしょうが、まあそれは問題ありません。感想は人それぞれですし、私の作品を評価しない方も大勢います。けれども書評家であるならば、書評対象にしていない作家を、都合良く刺身のツマのように扱うのはやめていただきたいものです。まして相手の言葉を不正確に再現し、発言者の真意を間違って伝えることは、書評家やインタビュアーが決して行なってはならない最低限のモラルではないでしょうか。

　正月のNHK番組『おはよう日本』で、新年の抱負を語った際、今年の目標を「医療再生、文芸復興」と書かせていただきました。私の言葉が届くのであれば、願わくば医療小説という新ジャンルの確立を、文壇の方々にお願いしたい。なぜなら、もしも医療がこのまま崩壊してしまったら、文学を楽しむどころではなくなってしまう。逆に言えば、崩壊寸前の医療現場からは、文壇からの援軍という、まったく新しい援軍の到来に最後の期待を寄せているのかもしれません。それくらい、昨今の医療現場は危機感に溢れているのです。
　正直言いまして、「ミステリマガジン」という、業界の方も数多く読まれている雑誌の書評欄で、私があたかも言ったかのような風評を流されることは、ミステリー書評界の巨人・池上冬樹大先生から、「ここから出て行け」と言われているようにも見えないでもない。私がミステリーの世界にいたいと思っては、いけないんでしょうか。ちょっとさみしいですね。

告知１．2月27日大阪で開催される日本集中治療学会で特別講演を行います。
　特別講演2「Ai（オートプシー・イメージング）が拓く医療の未来」
　司会　坂本哲也　 帝京大学　救命救急センター
　演者　海堂尊 　　病理医・作家

告知２．4月18日（土）、パシフィコ横浜で行われる日本放射線学会医学会総会で特別講演を行ないます。翌19日には、Aiに関するシンポジウムが行われます。放射線学会でAiに関するシンポジウムが行われるのは2回目ですが、前回は企画者・及び発表者として参加させていただきました。今回、私は発表者になっておらず、企画実行は放射線科学会の方々の手によるものと伺っております。Aiが放射線学会全体のコンセンサスとして受容された証拠だと思います。

告知３．「小説新潮」で連載開始です。タイトルは「マドンナ・ヴェルデ」。産婦人科医療を主題にした『ジーン・ワルツ』続編です。お楽しみに。

告知４．「週刊朝日」連載「極北クレイマー」は、4月単行本として出版予定です。

告知５．「小説現代」で連載された、日本におけるバチスタ手術の開祖、心臓外科医・須磨久善先生の評伝「外科医」は好評のうちに終了しました。7月に単行本化を目指します（たぶん）。