海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2009.02.19 2009:02:19:17:32:51

私に不利な証拠として

 続いては、スーパーヘビー級チャンピオン相手に無謀なチャレンジ。読売新聞の「新読書生活」という企画で文壇の巨人、筒井康隆先生と対談。これが400 名(たぶん)という会場満席の面前で、筒井先生とふたりっきりで一時間半ノンストップ対談という、新人(のような作家)だからこそ可能だった無謀なチャレンジ。もっとも、文学界相手の対談は、先方の作品をある程度読んでいることが最低限の礼儀だと考えると、私にとっては対談をお願いできるのが筒井先生くらいしかいなかった、というのもひとつの衝撃の真実だったわけなのですが。文学賞の選考話(当方はなかなか候補にさえしてもらえないので、雲上人のお話)から、ランキングこき下ろし(やっぱりなぜかランキングからは無視されるので、あんまり私には関係のない話)まで、筒井先生の大放談。その重戦車なみの行軍についていくので気息奄々。終わったあと控え室で、「おかげさまで皆さん、誰も居眠りもせずに聞き入ってくださっていましたね」と言ったところ、「いや、前列真ん中右の席で、寝っこけておった女子がおった。おのれ、と睨み付けたらあわてて起きおったが」とばっさり。そうか、居眠りする人が少なかったのは、筒井先生の気迫のおかげだったのか。気分は拙著『螺鈿迷宮』の桜宮巌雄に叩きのめされた白鳥圭介、といった塩梅。よく考えたら対談前、「実は大腸ポリープを切ったばかりでのう」と、体力的にやや難があることをほのめかしておられたというのに、医師にも関わらず、帰りの車中でようやく自分の配慮不足に気がつく。筒井先生、すみませんでした。何しろ筒井先生のペースについていくので精一杯だったもので。そして対談相手をお引き受けいただきありがとうございました。
 私はずっと、筒井先生のスタイルを踏襲させていただいているのでは、という気がしていたのだけれど(押しかけ弟子)、実際にお話を聞いて、自分がやっていることは実は全く違う中身なんだなあ、というのが感想でした。なんだか小学生の絵日記みたいになってしまったけれど、まあ私が生まれる前から小説家をやっておられるのにいまだに文壇のフロントラインを走っている怪物相手なんだから、私が小学生みたいになってしまっても仕方がない。
 対談の詳細は3月5日の読売新聞に掲載されるらしいので、内容はそちらで読んでいただくとして、ひとつだけ印象に残った言葉を。『壊れ方指南』という本の帯に「筒井康隆は壊れ続ける」とあったのを見て、私が「『筒井康隆は壊し続ける』じゃないんですか?」と尋ねたところ、筒井先生即答して曰く、「物事を壊すためには、自分が壊れなければならんのぢゃ」。
 絶句、おそれいりました。あ、文中の筒井先生の語調は私が勝手にデフォルメしてます。すみません。でも、そんなイメージだったんだもん。

 続いて放射線学会専門医会の偉い先生との対談。これは自分のバトルフィールド、Aiについてなので、戦う前から圧勝。というか、その先生と共にAiの実現をめざし、また一歩ゴールに近づいた手応えのある対談でした。こちらの詳細はいずれ、日経メデイカルのブログで触れることになるでしょうし、4月の放射線学会の頃には会場で配られる小冊子になるのではないかと思います。そうなのです。実は放射線学会はAiを全面的に対応すべく、専門医会のワーキンググループを創設したのです。これで画像診断のプロがAiに対応するシステムの骨格ができた、とほくほくしていたのですが。。。次の項目に続く。
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