海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2008.01.18 2008:01:18:16:27:20

バチスタ映画の背景として、知っておいてほしいこと。

 厚生労働省を中心に医療事故調査委員会の構築を目指し、あらたなる「死因究明制度」を作ろうとしている動きがあります。私の著作を読まれた一般の人なら、当然その中に「エーアイ」が中心的に据えられているとお考えでしょう。ですが驚くべきことに、彼らはエーアイについてはひとことも言及しようとしません。彼ら官僚及びその取り巻きの学者たちは、エーアイのことを知らないのではありません。彼らはエーアイの存在を「シカト」しているのです。
 ここで「死因究明制度」なる制度構築をしている官僚系の方たちの目論見を明らかにしておきましょう。その前に前提をいくつか。
6)「医療」とは生きた患者を救うものである。
7)死んだ遺体を調べるのは、「医学」で、「医療」ではない。
8)「医学」に対する費用を、「医療費」から拠出するのは間違いである。

 死んだ人を調べるために費用を出すなら、ひとりでも多くの患者を助ける費用に使うべきだ、という論議の根拠です。そしてその主張には、ひとりの医師として異論はありません。さて、続きです。

9)死亡時医学検索を行わなければ、死亡診断書は記載できない。
 これは当然ですね。検査せずには診断はできず、診断せずに診断書は記載できませんから。
10)死亡時医学検索には、体表から調べる検案(検視)、エーアイ、解剖がある。
11)それらの検査に対し、医療現場には費用支払いがなされていません。(司法解剖には費用が出ていますが、これは警察捜査制度であって医療制度ではありません)
12)つまり医療行政は、「死亡時医学検索をしなくても、死亡診断書を記載してよい」という暗黙の了解をしているのです。
13)エーアイが制度に組み込まれていない現状では、解剖された遺体以外は本質的には「死因不明」です。
14)現在、日本の解剖率は2%です。死者百人中、ふたりしか解剖されていないのです。
15)こうしたことを総合し、現在の日本社会は「死因不明社会」だということが言えます。
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