海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2012.12.21 2012:12:21:14:20:37

自民党の躍進、民主党の大敗、そして病理の教授依頼とか。

 さて、今年最後の近況です。

1)野性時代・2013年1月号で『輝天炎上』最終回。「医療エンタメ徹底解剖」という特集を組んでいただきました。ロングインタビューも掲載していただき、かなり力の入った特集になっています。香山二三郎さんの医療エンタメガイドも、これまでにない視点からの切り口で新鮮です。

 医療小説という枠組みはかくも豊穣だということが、この一年で明らかになりました。

2)来年1月刊行『輝天炎上』刊行予定。実は連載でも隠している壮大なトリックが。螺鈿迷宮を書き上げた直後からずっと温めていたもので、いつばれるかとひやひやしていましたが、あれから五年、とうとう誰にも見破られることなく、ついにそのトリックをお披露目できることになりました。

 これまで、誰も気がつかなかった桜宮の謎に迫ります。あっと驚く大どんでん返し。乞うご期待。

3)『このミステリーがすごい! 2,013年版』に、東城大シリーズの完結に寄せて、小文を寄稿しています。手にしたら、ああ、ほんとに終わったんだなあ、と。

4)【訂正】 以下は前回の再録「そろそろ告知を。来年の早い時期から小説新潮で連載開始。『ナニワ・モンスター』の続編で、タイトルは『スカラムーシュ・ムーン』。お楽しみに。
→この件で、担当者からさんざん怒られてしまいました。連載は「小説新潮」ではなく、「週刊新潮」です。だってナニワの続編なんだもん。
 我々を失業させる気ですか、と担当者に責められて、こちらもびびりまくり......。すみません、ごめんなさいごめんなさい。二度としません。たぶん。

5)南雲堂「本格ミステリー・ワールド2013」にて、「医学×探偵小説×21世紀本格」という対談を掲載してもらいました。島田荘司先生が座長で、麻生荘太郎先生、知念実希人先生との対談です。医療小説と本格の相性やいかに。

 ただし、ひとつ異議申し立てが。巻末の本格ミステリー・リストに今年刊行になった私の本が三冊掲載されていますが、見ると何やら米印がついていて、注釈にはご丁寧にも「※は境界線上の作品を示す」とあります。

 ええと......今年刊行した三冊のうち『スリジエセンター1991』は広義のミステリーでもありませんのでリストに掲載すべきではありません。『ケルベロスの肖像』は、本格ミステリーとしては※がついても仕方ないでしょう。でも一応ミステリーの範疇だと思っています。そして「玉村警部補の災難」は※は外していただかないと。何せ、『アリアドネの弾丸』以来のバリバリの本格ミステリーのつもりだったので。殺人事件を警察が解決するんですよ。しかもトリックつきで。これがミステリーじゃないと言われたら、私はもう驚いて口がきけません。

 こうやってミステリー・ギルドから外されていくのかなあ、と感じ入った次第です。何だかさみしい年の瀬です。

6)医療小説とは少し離れますが、宮崎の内科医、長嶺元久先生から歌集『カルテ棚』をいただきました。凝集された言葉を読み、臨床現場の空気を思い出しました。歌集を読むのは、伊藤一彦先生の『月の夜声』以来で、何だか新鮮でした。医療小説という枠組みは将来、医療文学という枠組みに拡張していくべきかな、と思った次第です。

7)さて、お年玉代わりに新たな告知を。

 『トリセツ・カラダ』刊行から足かけ四年。その中で予告していた『トリセツ・ヤマイ』、ついに刊行への第一歩を踏み出しました。カミング・スーン。いやはや、しかし取りかかってみたら、コイツが難事業でして。でも、医学系書籍はこれが最後になる予感がふつふつと。

8)12月の講演会はふたつ。無事終了。私立開成高校の父母会講演会では、テスト前の学生さんたちも多数参加。テスト前に私の話を聞こうという若人があんなにたくさんいるなんて、日本も捨てたものではない。いや、むしろ危ないのか。

 内分泌学会での公開市民講座は、名医による内分泌疾患Q&Aで久し振りに医学生気分を味わった後で、菊池桃子さんの講演拝聴。「医療は感情労働」というお話に、なるほど、と思わず手を打ちました。その部分が最近の医療現場では評価されていないんだな、と納得。


 今年は、仕事をしすぎた気がします。でも、もろもろ一区切りがついた年でもありました。

 来年こそは、何としてものんびりとバカンスを。

 ではみなさん、よいお年を。


                                                           2012年12月17日   海堂尊

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