海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2009.10.19 2009:10:19:15:21:51

「司法過誤」をAiセンターが食い止めた実例

 今回は実際に起こったケースで、Aiセンターが司法の医療に対する過干渉する事態を防ぎ、「司法過誤」を防止した貴重なレポートです。ご遺族はAiを熟知された関係者なのでここまで対応できましたが、もし素人だったら医療過誤事件をでっち上げられかねません。貴重な情報なのでご遺族の了承を得てメモを公開し、私のコメントをつけました。

【心筋梗塞におけるステント手術術後4日で急死したケース】
 亡くなったのは58歳男性で、レポートを送って下さったご遺族はその方の弟さんです。
 亡くなった男性は過去、心臓ステント手術を5カ所施行していました。奥さんは看護師で元大学病院ICU勤務。1ヶ月前より夜半時胸痛と左肩の疼痛を訴え、ステント手術を実施、一回目に2本のステントを入れようとしたが失敗し、入院翌日に2回目を施術しました。その二日後退院、自宅療養二日の後に通常出社しています。その翌朝、朝起きると、心停止状態であることに奥さんが気づき、蘇生措置を施すと同時に長男が救急車の出動を要請しました。5分後に救急隊員が到着。奥さんは蘇生処置を続行していましたが、救急隊員が心電図を装着して心停止状態を確認し、蘇生措置が無駄であることを告げ死亡宣告し、警察に連絡しました。
 担当署の警官が到着、検視を始めました。検死はすぐ終了し、警察嘱託医に連絡しましたが都合が付かず近隣病院より別の医師が到着、死体検案書を作成しました。死体検案書に書かれた死因は心筋梗塞で即死だったそうです。
※ ここでの問題点は明白で、体表からの検案だけで、「心筋梗塞」の診断は医学的に不可能だ、ということです。これが「死因不明社会」における死亡時医学検索のお粗末さを証明しています。

 その後、関係各位に電話連絡し葬儀の準備を始めました。その時、県警本部よりもう一度"検視"を行いたいと申し入れがありました。ご遺族は、その県に3人しかいない検死官がわざわざ来るので不審に思ったそうです。死体検案書が出され、所轄の検死が行われた後の再度の検視要望だったので行政解剖か司法解剖施行を視野にいれているのではと推測し、前もって解剖をどう思うか奥さんに聞くと、奥さんは元ICUの看護師だったので、判断は医学的な情報に基づく冷静なものでした。つまり「ステント挿入では施術直後、ないしは翌日に悪化する例はあるが4日後に死亡した例はほとんどなく、内因死が妥当だ」というものです。医療についてはインフォームドコンセントが不十分なことを除けば訴訟の意志はなく、解剖するとしたら理由がわからないと思ったそうです。ただし警察からはまだ解剖要請はなく、ご遺族の推測です。ここでAiを熟知していたご遺族は、次の行動に出ます。知り合いの千葉大学Aiセンター副センター長の山本先生にコンサルトしAi適応のサジェスチョンを受けました。この時点で病院へ連絡、主治医の説明を聞くと同時にAiを要請、カルテ情報開示、術前術後画像の公開を依頼、担当医は同意しました。担当医はよく知っており受け入れに協力的で、実際に数例Aiの実施経験もあったそうです。費用は病院負担でした。ただし遺族申し入れのAiは初めてなので遺族からの費用拠出を提案したところ事務も納得しました。院内コンセンサス(外部からの遺体搬入を含め)は問題なく、積極的にAiを導入したいという意思が感じられたそうです。その時、病院からの問題点は以下の3点だったそうです。
1.読影に関しては外部機関に頼むのが絶対条件。
2.撮影プロトコルの指示を受けること
3.時間帯は外来患者の帰った8時以降に行うこと。

  ※ こうしたことの大部分は、すでにガイドライン化されていて、10月中旬発売の「Aiガイドライン」(日本放射線学会専門医会AiWG・日本放射線技師学会Ai活用検討委員会編・ベクトルコア社)で公表されます。一方で深山班の研究では、これから検討にはいるようですが、すでに専門家がガイドラインを策定している点についてどうお考えでしょうか。
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