海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2009.09.18 2009:09:18:17:47:53

この報告症例は、「Aiは解剖と同等に有用」だったのでは?

 ところで東大病理学教室では、その後なぜか病理解剖室の隣に死体専用CT機の設置を決めたそうです。Aiは解剖ほど役に立たないのであれば、解剖関連教室にCT機を導入することは無駄ではないか、と思うのは私だけでしょうか。
 解剖ほど役に立たないと判断しているCT専用機を死体専用に入れることができるなんて、東大は医療費削減で厳しい状況の地方大学や地方医療現場と違って、なんと恵まれた環境でしょう。そこまで恵まれているのですから、せめて日本の医療界のため、医学的に正当な評価研究を行っていただきたいものです。 そこでは、死体のための画像診断を行うわけで、読影も含めたら、病理医には対応できないことは明瞭です。なのでそれは自ずと、Aiセンターと呼称されるシステムになるでしょう。
 ついに東大にもAiセンターが出現したのです。快挙ですね。その時は「Aiは医療現場で医療従事者(放射線科医と臨床医)が行い、その費用は医療費外から医療現場に支払われる」という枠組みを厳守しないと、Ai診断をただ働きをさせようとしている、行政が目指すシステム構築に手を貸すことになり、数年後、そうした枠組み作りに協力した人間は、医療界全体にたいする裏切り行為を働いたと糾弾されかねません。どうかご留意を。

 この研究班は、前年度わざわざオーストラリアから死後画像の専門家をお呼びし、講演をお願いしています。ですが国内にいるAiの提唱者である私には一度も声が掛かりません。日本医師会の検討会、法務省、内閣府、日本放射線学会、日本放射線技師会、日本集中治療学会、といった関連部門から講演に呼ばれているのに。今期の班員、協力員は併せて三十名の大所帯であると仄聞しています。それほどまでの大人数を集めながら、どうしてAiの概念提唱者の私に、一度も声を掛けないのでしょう。本当に不思議ですね。

 時代は刻々と変わっています。ついに先日、「中国四国厚生局主催・医療安全ワークショップ」の講演依頼を正式にいただきました。つまり厚生労働省でも地方や若手の官僚が、自発的にAiの必要性と重要性に気づき始めたということで、素晴らしいことだと思います。さすがにもうドタキャンはなさそうです(笑)。 さて、ここで指摘したような内容について、討議すべきは司法の場でしょうか、それとも学術の場でしょうか。本来アカデミズムの場で自由に討議すべき内容を、いたずらに司法の場にもちこむというのは、アカデミズムの死を招きかねない行為だと思います。
 この期に及んでも病理学会の上層部の先生たちは、この問題に責任ある発言しようとしません。こんな調子では病理学会の未来は暗いです。少なくとも若手医師は愛想をつかすのではないでしょうか。だって明日は我が身、いつ何時、私と同じ様な目に合わされないとも限りません。こんな目にあわされるのであれば、病理学会で研究なんてしたくなくなります。私のような立場になければ、泣き寝入りさせられていたと思いませんか? まったくもってひどい話です。


以上

2009.09.15  海堂尊
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