海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2009.02.03 2009:02:03:17:28:37

『平成21年秋開催予定の第55回日本病理学会秋期特別総会における学術研究賞演説(A演説)』に演題応募しました。

死亡時医学検索におけるオートプシー・イメージング(Ai)の役割

 選考用抄録 (800字以内)
前世紀の医学は解剖を基礎において進歩したが、新世紀は科学技術の進歩と社会の拡大に伴い、更なる概念進化を要する。「解剖は医学の基礎」という前世紀ドグマは、新世紀には「死亡時医学検索が医学の基礎」と言い換える必要がある。医学に重要なはずの「解剖」は施行率2%台に低迷し、低下傾向に歯止めがかからない。これは解剖に重大な欠点が存在し、社会から排除されつつあるためである。その欠点は1)遺体を損壊する非人道的検査のため、遺族の了承を得にくい。2)解剖診断報告まで平均3ヶ月以上と時間がかかりすぎる。3)破壊性検査のため解剖で多くの情報が失われる。4)特殊な技法のため、専門訓練が必要で、マンパワーも乏しい。5)国家の費用拠出根拠が医療現場で確定されていない。などである。 こうした弱点を補完し、新しい死亡時医学検索の概念を打ち立てる検査法が出現した。オートプシー・イメージング(Autopsy imaging = Ai)である。Aiの定義は二重性を持つ。狭義は1)死亡時画像・画像検案 広義は 2)死亡時画像病理診断 である。1)は画像単独情報、2)は画像診断後に解剖を行い、その情報を加味し死亡時医学情報を構築する、新次元の概念である。Aiは非破壊検査で、短時間で診断でき、遺体を損壊しないので遺族承諾を得やすく、得られた情報を直ちに遺族に直接呈示で情報還元ができるため、一般市民から強く導入が望まれている。Aiは新世紀の日本社会が要請する、画期的な検査法である。新世紀死亡時医学検索はAiを解剖が補完する、つまり解剖がAiの補助検査になるというパラダイムシフトが行われる。Aiに対する厚労省の公募科研費に、病理学会理事長と副理事長が連名で応募、研究費を取得するなど、病理学会として注視していくべき分野でもある。今回、Aiに関する最先端の知見を、Ai研究第一人者としてまとめたので報告する。

 何で、こういう学術的なことをこの場で報告するかというと、私自身、病理学会上層部の問え透明性、及び公平性を疑うような目に遭わされているからです。
 Aiは、病理学会理事長と副理事長が公募研究に連名で応募し、採択されるような、病理学会としても重視すべき学術素材だということは、病理学会が自ら明らかにしております。ところが、学術団体の上層部がその気になれば、いくらでもこうした選択に恣意性を加えることができる。
 証拠があります。
 実は昨年春、「夏の病理学校」なる会に講演者として招聘されました。病理学会が関係する会で、ちょうど医療系のブログで病理学会上層部が絡んだ厚生労働省科学研究費問題を指摘した直後だったので、私は担当者にその由を告げ、「再度検討された方がよろしいのでは」と言ったところ、担当者からは「いえ、こういう話(Ai)は大切だと思いますし、先生の話を聞きたいという声も多いので」という頼もしいお返事をいただいたので、受けたのです。ところが五月中旬に開催された病理学会総会の翌日、担当者からドタキャンの報せを受けました。理由を尋ねてもただひたすら、「声を掛けた自分がその会の主旨を勘違いしていまして」のひとことに終始していました。まあ、そんなことはなかろうと思っていましたが、何があったかおおよその検討がつきましたので、責める気もありませんでした。案の定、後にこのドタキャンが病理学会の偉い人の指示だったことを、その現場に居合わせたという別の先生から仄聞しました。(あ、誤解を受けるといけないので明記しておきますが、この病理学会の偉い人とは、今私を名誉毀損で訴えているお方ではありません、念のため・笑)。ちょうどその頃、時期を一にして、医療安全評価機構から依頼されていた地方講演も会場の都合とかでドタキャンされました。
 講演依頼のドタキャンを喰らったのは厚労省関連がふたつ、病理学会関連がひとつの計3つですが、以来、そのふたつの組織は信用できなくなったのです(笑)。
 それにしても、「講演会の主旨が『がんと幹細胞』というタイトルなので、Aiはふさわしくないということで、申し訳ありませんがキャンセルさせて下さい」と平謝りしていたのに、差し替えられた特別講演の演題が厚生労働省保険局の「平成二十年度診療報酬の改訂について」だったのには、本気でずっこけました。診療報酬改定のどこが、『がんと幹細胞』研究と関係があるというのでしょうか。
 こんな経緯があったものですから、病理学会上層部に、公正に私の演題を評価してもらえるか、ヒラの一学会員としてはとても不安なので、このように異例の公開をすることにしたのです。
 知り合い数名の評価の公約数をお伝えすれば、「演題としては採択されて当然。時代も社会も要請している最先端で新しい学術領域だから。だが病理学会の体質を考えると却下される可能性もある。ただし却下した時には、病理学会の存在意義が問われかねない事態になるでしょう」 他の学会の偉い人、並びに医療ジャーナリスト数名の共通項的意見です。さて、結果をお楽しみに。ちなみに蛇足ですが、演題は病理学会事務局に無事到着、とりあえず正式に受理されています。
続きを読む 1234