海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2007.11.21 2007:11:21:16:20:01

バチスタ映画・撮影順調

 先日『チーム・バチスタの栄光』の映画撮影現場に見学に行って来ました。首都圏にあるとある病院で行われたロケです。病院にかかる迷惑が最小限になるよう、土日に集中して撮影を行うのだそうです。
 行きの車の中で突然、宝島ワンダーネット(宝島社とは別会社)の社長にこう聞かれました。「お医者さんと患者さんのどっちがいいですか?」
「は?」
「いえね、映画では、原作者の方にちょい役で出てもらうのが恒例になってまして」
(うそつけ、と思いつつ笑いながら)「どっちかと言われれば、当然医者役ですね」
 社長はうなずきます。
「そりゃ、そうですよね。患者役より、白衣のお医者さん役の方が絶対カッコいいですもんね」
「いえ、あの、そういうことではなくて」
「え? じゃあ、どういうことですか?」
「ほら、その、私は医者ですから、芝居じゃなくてできるんで」
 一瞬考え込む社長。それから、ぽん、と手を打って
「ああ、そうでしたそうでした。まだお医者さんをされていたんでしたね」
(だから医者を辞める気は無いんだってば。やりかけの大仕事があるんだから)
 車はロケ現場に到着します。撮影中だったので、出番ではない出演者の方々にご挨拶をさせていただき、それから衣装室に連れて行かれて白衣を着ます。別に特別の感慨はありません。(当たり前)。やがて、一場面の撮影が終わりました。中村監督とご挨拶。穏やかそうな方でした。そして、おもむろに私に指示をだします。
「こうこうで、こうして下さい。で、セリフはフランス語で」
「ふ、フランス語?」
 中村監督は不思議そうな顔をします。「あれ、お話ではフランス語がぺらぺらだとか」
 どこから一体そんなデマが。私はかろうじて言いました。
「とんでもない。英語なら少しは」
(本当に少し、なんですけど)
 中村監督は腕を組んで一瞬考え、いいます。「仕方ない。じゃあそれでいいです」
 穏やかな中村監督のプロの素顔を見せられたのは、それからすぐでした。患者を運ぶつきそい医というちょい役、セリフひとことのシーンを取り直すこと5回。(ただしこれは、中村監督の執念というより、役者が未熟ゆえという意見もある)。 ようやくオーケイをもらい、ほっとしました。どっと疲れました。その疲れは、体力的なものいうよりは、私の未熟な演技のせいで、五度も同じシーンを繰り返させてしまった他の出演者の方々への、申し訳なさからくる精神的疲労だったことは言うまでもありません。
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