海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2014.08.25 2014:08:25:17:17:17

見れども見えず、聞けども伝えず。ヘッドレス・ジャパンの真実

実は今、極秘プロジェクトが進行中です。まあ、大袈裟なものではなく単にこのブログを書籍化しようとしているのです。過去のブログをブラッシュアップしている最中ですので特にこうした記事や推進案を見ていると感無量で、うるる。

 

結構何回も同じことを繰り返し書いているので、そうした部分を刈り込んでいる真っ最中です。流れを読むと、なかなか思うように進まないという苛立ちと、まあそれでもそこそこ進んだなあという感慨が交互に訪れます。進んだ部分は、私の主張に賛同してくださった多くの人によって運ばれて行ったんだということがしみじみと実感されます。

 

さらに、削除された日経メディカル Onlineの伝説ブログ(笑)、「死因不明でいいんですか」も収録する予定です。私の中では宝島社公式ホームページの「海堂ニュース」と日経メディカルブログ連載の「死因不明社会でいいんですか」は一体化していたようです。宝島社のブログが止まっている間は日経メディカルのブログが充実し、あわせると話の流れがつながるのです。民事裁判部分は弁護士の指導の元、修正していますが内容は一ミリもブレていません。

 

 私がブログで糾弾した対象は、法医学者の不誠実な仕事ぶりとか病理学会上層部の破廉恥さ、厚生労働省の無作為とそれを正当化しようとする厚顔ぶり、無神経なキャッチを使い続ける本屋大賞など少数に限られています。大半は公の検討会などの場で明らかにされた事実を基に論評したものです。そうした発言があった場にはたいていメディアもいました。私が大問題だと思って拾い上げた発言に、記者たちは反応しなかったのです。たとえば法医学の薬物鑑定の場でデータの捏造が行われているという、議連での法医学者の告発はすごいスクープだと思ったのですが、報じた新聞はありませんでしたし、厚労省の検討会で司法解剖の質は低いと爆弾発言をした法医学者の発言もどこもとりあげませんでした。厚労省のAi検討会で私が発表した際、厚労省が前年の解剖率の数字を把握していないという瑕疵も誰も報じませんし、厚労省は勝手にその部分を割愛した議事録を作成していました。このように社会問題を提起しても報じないため、問題が顕在化しないのだということをしみじみと実感しました。

 

 それでも毎日新聞の記者は、無理だろうと思った神奈川県警と横浜市監察医務院の問題や新設された法医解剖の空虚な実態をスクープ記事にしましたし、日本医師会は、「Aiは重要だから医師会で対応します」という言葉を有言実行してくれ、8月末には「小児死亡例に対するAi実施のモデル事業」が開始されます。印象では打率は二割。でも打席に立ったからこその二割で、バックグラウンドのない一個人としては、まあよくやったのではないか、と思います。

 

 情報を入手できる立場の人が知り得た情報を適切に社会に発信するという行為が大切です。「見れども伝えず、聞けども報じず」ではメディアの存在意義はありません。しかも官僚が誘導しようとする大本営発表は嬉々として報じるなんて、官僚組織の愛玩犬に成り果てています。

 

 私個人、民事裁判を体験し、その中身が社会と乖離し形骸化しているという事実も理解しました。作家には無駄な体験などないのだ、ということを実感している今日この頃なのでした。

 

 

続きを読む 1234