海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2014.08.25 2014:08:25:17:17:17

見れども見えず、聞けども伝えず。ヘッドレス・ジャパンの真実

 死因究明関連二法案を思い通り成立させたため一年ほどおとなしかった法医学者が、またぞろ不満を口にし始めました。こうした不満たらたらの状態に戻ることは一年前にブログでも予言していましたが。そうした記事を掲載し、ツッコミを入れてみましょう。

 

 

死因を究明し安心・安全な社会へ(池田典昭さん=日本法医学会理事長/九州大教授)
メディカル朝日2014811日
(下線部:筆者)


 

"死因不明社会"ニッポン。世界一複雑な解剖制度もあって解剖の件数が増えない中、12年に成立したいわゆる死因究明推進二法を提唱してきた日本法医学会の頂点に立つ。9月に失効する「死因究明等の推進に関する法律」の後継法が検討される中、全国どこでも簡単に死因究明ができて安心・安全に暮らせる社会を目指し、人材育成にも心を注ぐ。――日本の死因究明体制の現状は?

池田 三流国ですね。解剖の制度が複雑すぎます。解剖が法医と病理で分かれている国は、日本だけですよ。法医解剖にはさらに、司法解剖、行政解剖、承諾解剖、新法解剖(権限解剖)と4種類あり、正確に機能していません。

 

→ もともと複雑だった解剖に、新しい法律で新解剖を加えて更に複雑化する提案をしたのは法医学者です。複雑すぎる解剖制度だと批判しながら、更に細分化した張本人の団体のトップが、何と無責任な発言でしょう。

 

 

池田 ご遺体を最初に扱うのは警察庁で、内閣府は死因究明に理由を付け過ぎます。厚生労働省は公衆衛生の向上が目的で、片や警察庁は犯罪捜査の端緒として監察医のような制度が必要と言う。死因究明は、日本国民が国内で安心・安全に生活していくために最低限必要なことで、日本のどこで死んでも同じように死因を究明してもらえるようになれば、公衆衛生が向上し、犯罪捜査も進展します。死因究明のもう一つの問題は、それが医療として認められておらず、医学になっている点です。厚労省をはじめ、医療は生きている人の治療のためのものだと言いますが、出棺するまでを見届けるのが医療です。死因究明が医療に位置付けられれば、死後画像診断(オートプシー・イメージング、Ai)も医療保険で賄えるようになります。





 

→医療は生者のものですので、「出棺するまでを見届けるのが医療」という発言は社会論理構造上、間違いです。これは法医学会が厚労省からカネを引っ張るための詭弁です。Aiを医療保険で実施するのは無理なのです。法医学会理事長が「Aiも医療保険で賄う」と言う場合、「Ai」は捜査のための法医Aiで、発言の真意は次のようなものです。「死因究明が医療に位置づけられれば、捜査に用いるAiに医療費が流用できる」。法医学会はこれまで解剖費用の増額を世間に訴え続けてきましたが、「医療分野の解剖」である病理解剖の費用問題に触れたことはありません。名前に「医」という言葉がついているからといって騙されてはいけません。法医学者は「医学」で捜査協力する捜査担当者の一員であり、患者を治療する「医師」ではないので、医療に無関心です。ですから「死因究明は最後の医療」なる、無責任で根拠のない言葉を流布させてはならないのです。

 聞くところによると法医学会の理事が主宰している千葉大法医学教室では、検死CTを無料実施しているのだとか。しかもそのお膝元の千葉県警では遺族にAiを勧めて実施後に、遺族が病院に費用を支払えに言うのだとか。千葉の死因究明はいったいどうなっているんでしょう。千葉は私のふるさとなので心配です。法医学会理事長を名乗るのなら、そのあたりの実態も把握してから発言していただきたいですね。

 

 

 死因究明を促進するための法整備
――2012年に「死因・身元調査法」と「死因究明等推進法」の死因究明推進二法が成立し、何が変わりましたか。


池田 法医解剖に新法解剖が増えました。新法前の一番の欠点は、遺族の承諾なしに解剖ができなかったことですが、警察署長の同意でできるようになりました。かつては監察医制度がない地域で人が亡くなり、明らかに病死か分からず犯罪性も明白でないというご遺体は解剖する術がなかった。「死因不明社会」と言われ、力士暴行死事件やパロマ湯沸器死亡事故など、犯罪や過失も見落とされてきました。この点について少しは進歩しましたが、これまで身元不明で警察が必要と思ったものは、被疑者不詳の殺人事件と称して司法解剖されていたのが、新法解剖に移行しただけです。解剖の総数はむしろ減っているぐらいです。

 

 

→新法解剖の設定は屋上階を重ねるようなもので無駄になると指摘しましたが、法医学者は耳を傾けませんでした。解剖は社会の要請に応えられていないので今後も減り続けるでしょう。警察関連の解剖は微増していますが、異状死は全例解剖という原則からすれば、、もともと一割しか解剖できていなかったための反動にすぎません。

 

 さらに「力士暴行死事件」は名古屋、「パロマ湯沸器死亡事故」が発見される発端になった例は東京と、どちらも監察医制度のある地域です。監察医制度があっても「死因不明社会」は解消しないのです。

 

 

――二法が出た後、学会理事長名で国に要望書を出されましたね。

 

池田 一つはお金の問題です。警察庁は新法解剖は死因究明のためで鑑定ではないという考えです。解剖と検査には最低でも25万円はかかるのに警察は6万円しか出さず、都道府県の6万円と合わせても12万円しか出ない。千葉や宮崎のように司法解剖と同等の金額で新法解剖をやっている県もあります。30万円かかったら24万円は県が出す形で契約したり、教授の力が強く強引にお金を引っ張れる県もある。解剖して心臓に傷があれば刺創による出血で終わりかと言えば、病気があってショックを誘発しやすかった、あるいは薬を飲んでいて抵抗できなかったと、付随的なことが後から出てきます。ひと通り検査をしたくてもお金がないと解剖できない。死因究明は、国の業務だと認識してほしいというのが、要望の骨子です。都道府県任せでは何も変わりません。

 

 

→ やはり法医学者の関心事はカネです。

 

 

死後画像の普及のための課題

――Aiがかなり注目されていますね。

 

池田 2003年ごろ、放射線医学総合研究所重粒子医科学センターからAiを広めたいと、私に電話があり、05年に私はオートプシー・イメージング学会の学術総会で特別講演させてもらいました。その後、海堂尊氏が本で死因不明社会を糾弾し、ブログなどで法医学会を攻撃して、両学会の関係が悪化し、Aiの普及は5年は遅れたと思います。協力し合えればもっと進んでいたでしょう。法医学では、元から法医放射線学として死後画像を撮っていますし、Aiは必要だと認識しています。例えば、銃撃された人は、X線でないと弾が見つからないことがあります。私が法医学に入った30年前は、ご遺体を密かに動物センターに運んでX線装置を借りていました。海堂氏のCTを使おうという着想は良く、それでAiは飛躍的に進化しました。しかし脳出血があれば、死因は脳出血と分かりますが、法医学では、外傷性か内因性か、単なる死因ではなく、亡くなった状況を含めた死因を究明しなくてはならない。自殺か他殺か事故死かを見極めなければ、パロマの事件と一緒で、一酸化炭素中毒は分かっても大元の原因は究明されません。

 

 

→ひどい悪文だし内容も不実です。センターは電話しません。センターの誰が、と書かないと日本語になりません。そう書かないのは電話をしたのが私=海堂で、すると後段の私への批判が弱まってしまうからでしょう。記者は日本語の勉強をした方がよろしいかと。事実を知る私が5WHを踏まえて正確な報道文を書いてみましょう。

 

池田 「03年12月、Ai学会を立ち上げるにあたり、Ai提唱者で重粒子医科学センターのE氏(私の本名)から、Ai学会の理事に就任してほしいという要請があり、私(池田教授)は即座に受けた。そして第二回Ai学会ではAiの研究実績を持たない私に特別講演までさせていただき、法医学者を厚遇していただいた」

 

 ちなみに当初、Ai学会は理事長制でなかったため、08年の第五回まで特別講演の発表者は事務局を務めていた私が決めていました。この時、池田教授の教室ではAiの実施実績はゼロでしたが法医学者へのリスペクトとして、あえて特別講演をお願いしたのです(第一回は病理の教授でした)。こうした部分に触れないで批判するなんて、恩知らずですね。

                 

 

池田「その後、海堂尊氏が本で死因不明社会を糾弾し、ブログなどで法医学会を攻撃し、両学会の関係が悪化し、Aiの普及は5年は遅れたと思います。協力し合えればもっと進んでいたでしょう」

 

→ 最後の一文だけは同意しますが、「ブログなどで法医学会を攻撃し、両学会の関係が悪化し」というのは雑です。私は一個人、対する法医学会は学術団体です。私が攻撃したから両学会の関係が悪化したというのはおかしな誹謗です。私は2010年、Ai学会の混乱を収束させてから理事を辞し、一線から離れました。ですので五年の遅滞は、私がAi学会から退いた後の話です。しかもその後、Ai学会理事長から法医画像研究会という、法学者の内輪の会に共催を持ちかけたら無下に断られています。ですから法医学会がAi学会を毛嫌いしていたのを私のせいにするなんて、法医学会の見識が疑われてしまうような発言です。

 

 ここで私のしたことと法医学会の反応を正確に報道文として書いておきます。

 

「海堂氏に閉鎖体質、情報隠蔽体質、無監査問題、司法解剖の質の低さなど法医学の諸問題を手厳しく指摘され、法医学会は自己防衛のため自閉的になった」。

 

この記事に言及した「法医学者のたわ言」なるブログでは感想で以下のように書いてありました。

 

死後画像検査についても意見が出ていた。解剖だけで死因の究明はできないし、画像診断だけでも死因の究明はできない。日本では警察がある意味では楽をするためのスクリーニング検査としてCTや簡易薬物検査が実施されているが、(以下略)」(下線部:筆者)

 

 あえて「Ai」という用語の使用を避けたみたいに読めるでしょう? 法医学者や警察が「Ai」という用語を毛嫌いしている事実はブログでも指摘しました。Aiには死亡時画像診断と「診断」という言葉がついているけれど、法医学者は画像診断の素人で肝心の「診断」ができないので、自分たちの縄張りにできないからです。記事ではAiと明言しているのにご丁寧にも「死後画像検査」とわざわざ言い換えている「法医学者のたわ言」のブログが何よりの証拠でしょう。おそらく法医学者が書いているのでしょうが、そもそも匿名で書くという行為自体、法医学者の意気地なさを世間にさらしています。この「たわ言」を書いている人物のAiに対するアレルギーは強く、法医学者の反感の根強さを感じます。

 

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