海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2014.07.25 2014:07:25:22:08:17

世の動きは遅々として進まず、だが蝸牛のように少しずつ前進している、のかも。

 久し振りにAiと死因究明制度の話から。

 

 6月中旬、ブログでも取り上げてきた、死因究明関連二法案の片割れ、死因究明等推進計画(案)が公表されました。これは二年の時限立法で、今年の秋がその時限でしたが、結局、具体的な推進計画は策定できず、政権与党の自民党は時限立法の延長を模索し、民主党と話し合い、医師会もそうした方向をサポートしていました。ところが民主党が時限立法の延長に賛成せず、どうもこのまま尻切れトンボで終わってしまいそうだという話です。......もう、民主党には心底、失望させられました。ダメだ、こりゃ。

 

 

 死因究明等推進計画の冒頭の骨子は、なかなかお寒いものに感じられました。

 

 冒頭、推進計画を策定することで期待される三点の効果が列記されています。

 

   死因究明等が政府及び地方公共団体を始め、社会全体が追及していくべき重要な公益性を有するものとして位置づけられること。

 

   政府及び地方における死因究明等の推進・実施に係る連携体制の構築を始め、死因究明等に係る実施体制の強化が図られること。

 

③ 検索する医師の質の向上を始めとした死因究明等に係る人材の育成及び資質の向上が図られること。

 

 

 何を言っているのか、おわかりですか。私には理解でき、同時にさっぱりわかりません。理解できるのはこの問題を追い続けてきたので、官僚たちがどうしたいのかわかるということです。さっぱりわからないのは、これからどうするのかが全然みえない、ということです。例によって、官僚の空疎な言辞を、私、海堂が翻訳してみます。

 

「死因究明は公共性があって大切だよ。だから政府と地方で連携していこうと思うんだ。あと、死因究明をしてくれる優秀な人材も育てなきゃ」

 

 ......たぶん、これで合っているはず。そして反対する理由はないけれど、賛成するにはあまりにも虚ろだということがわかっていただけるでしょう。

 

 死因究明が公益性が高いというのなら、死因の情報開示についてひと言あってしかるべきです。なぜならわざわざ付帯決議がついた特別な要望だから。

 

 とまあ、否定ばかりするような中身ではなく、その中の【③医師の質の向上】という部分には、素晴らしい意識転換の痕跡がみられます。そこには解剖医の養成という言辞はなく、検案の質の向上を「政府としては日本医師会とも連携の上、検案や死亡時画像診断に係る研修を実施することにより検案に携わる医師等の充実及び技能向上に努め、医師等による死因究明の質の向上、全国斉一化を図る」とあります。まさに死因究明制度の最大の問題は検視検案が弱いところにあったと意識した報告書になっており、こうした意見になったのは検討会に日本医師会代表と日本放射線学会代表という、これまで参加することがなかった医療代表が参加したための収穫でしょう。

 

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