海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2014.06.17 2014:06:17:14:00:11

日本医療小説大賞と「死因究明学講座」の創設に関する所感

 先日、興味深い手紙が勤務先に届きました。「『死因究明学』の創造と担い手養成プラン」キックオフシンポジウムへのお誘いでした。

 

 大阪大学で『死因究明学』コースなるものが創設されたらしい。大阪大学と言えば以前在籍していたAi学会理事の飯野先生(現在は異動)が、法医学分野でAi導入をめざして尽力されていたところです。また、その講座を立ち上げた松本教授は元札幌医大に在籍し、札幌医大にはAiセンターが早期に創設されていました。

 

 というわけで「死因究明学の創造」なる大向こうのタイトルなので、きっとAiも大きな比重を占めるだろうと予想していたら、プログラムを見て啞然としました。

 

 以下、肩書きを発表順に列記してみましょう。

 

 

 開会挨拶    大阪医大学理事・副学長。

 来賓      文部科学省 高等教育局医学教育課長

 シンポジウム  大阪大学大学院医学系研究科 内科学講座教授

         内閣府 死因究明等推進会議事務局参事官

         大阪大学医学系研究科 社会医学講座(法医学)教授

 パネリスト   日本法医学会理事長(九州大学教授)

         内閣府 死因究明等推進会議事務局 参事官

         厚生労働省 医政局医事課長

         文部科学省 高等教育局医学教育課長

         日本病理学会理事長(東京大学教授) 

 

 

 まあ、お名前を挙げる必要はないので、肩書きだけ列記してみました。要するにお役人と法医・病理関係者、それに内科学となると、これはもう以前失敗に終わったモデル事業の残党の大集合ということになります。

 

 驚くべきことに、画像診断関係者がひとりもいません。「死因究明学の創設」とは名ばかり、古い解剖至上主義者が集まっただけということですね。

 

 少なくとも内閣府の会議でもAiの重要性は認知されていますし、病理学会理事長や法医学会理事長は、かつてAiに深く関与したことがある人たちです。シンポジストやパネリストのほとんどの方がAiの重要性はわかっている方たちなのに、あえて解剖関連のメンバーだけで発表者を固めてしまったところに、法医学会と病理学会、そして霞が関における、死因究明制度の閉塞感が浮き彫りになってしまっています。

 

 ここまで無視すると、ここに参加させると注目を全部持って行かれてしまう、と解剖関連学会の関係者が危惧しているということが、逆に浮き彫りになってしまいます。

 

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