海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2014.04.24 2014:04:24:15:44:56

批判はタブーでスルーの本屋大賞。あるいは久し振りに死因究明制度についてのスクープ。

 これでは今後、作家は書店員や本屋大賞を批判できなくなるでしょう。

 

 迂闊に批判すれば今回の私のように「売れない作家のひがみ」とか、「ノミネートされない妬み」などと言われ、普通の作家ならプライドがずたずたになってしまうでしょう。

 

 人伝に聞いたところでは、私と同じように感じている作家も少なからずいるらしい。中には、へえ、あの人がねえ、という、権威ある文学賞を多数取った、著名な作家もいるらしい。

 

 でもそんな人たちでさえ、声を上げられないようです。毒にも薬にもならない日常をだらだらツイートするくらいなら、いっそきっぱり言っちゃえばいいのに。

 

 でも、書店員の方たちも、以後は多少、身の程を慎んだ方がよろしいかと。本屋大賞から無視された作家の恨みは沈潜し、深い恨みとなってある日どこかで噴出するでしょう。

 

 口に出せないルサンチマンほど、こじれるものはないのですから。

 

 

 私なんて可愛いものです。こうして声を上げているんですから。書店員さんが、私を仮想敵だと考えるのは間違いで、身体を張って公然と抗議したのは、書店への愛情でもあったのです。

 

 でも正直言えば、自己顕示欲丸出しの乱痴気騒ぎをテレビ画面で見せつけられ、「やっかみ」などと揶揄された挙げ句、問題点を指摘しても完全無視を決め込まれたら、もう書店なんてどうでもいいやと捨て鉢な気持ちになりました。

 

 

 そんな中で救いは、私の批判を知ったかなりの数の人たちが「書店員が一番売りたい本!」というキャッチコピーに違和感を感じてくれたことです。

 

 それだけでも書いた甲斐がありました。

 

 どうやら、希望の種だけは播けたようです。

 

 

 一連の批判を展開したことで、本屋大賞の問題点が明確になってきました。乗りかかった船ですので、本屋大賞批判の総括をしてみたいと思います。

 

 問題点は十以上あったのですが、その中で五点に絞って説明します。

 

 

 問題点① 書店員の、書評界における不当な地位向上

 

 

 今や本屋大賞で注目を浴びるようになった"カリスマ書店員"が文学界を跋扈しています。書評は書くわ、帯にコメントするわ、エッセーを連載するわのやりたい放題、本のソムリエという地位を、書評家から奪い取ってしまいました。

 

 実際、影響力に関してはもはや完全に「書店員>書評家」になっています。

 

 でも書籍の評価に関して、書店員は本当にそんな実力があるのでしょうか。

 

 まあ、書店員の自信だけは、びんびん伝わってきますけど、それって過信なのでは?

 

 

 書店員のそんな特別扱いを見ていると、本屋大賞の選考で優遇してもらいたい、という版元の深慮遠謀が透けて見えてきます。帯の推薦文を書けば、本屋大賞に投票せざるを得なくなる。一票が買えると思えば、帯の推薦文を頼んだりエッセーを小説誌に掲載したり書評を頼んだりするなんてお茶の子さいさいです。

 

 こうなると本屋大賞は、単に書店員の地位向上の道具に見えてきてしまいます。

 

 

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