あれ?
「本屋さんが『一番』売りたい本」を決めるのに、三冊も推薦するんですか?
これでは看板倒れ、キャッチコピーに偽りあり、です。つくづくこのキャッチコピーはまやかしだと思います。自分たちの企画内でさえ、言葉が破綻しているわけですから。
こういうのを古い諺で、「羊頭狗肉」と申します。本屋大賞のやり方からしても、キャッチコピーは変えないと、言葉を商う商売人としては失格でしょう。
そうなると一次投票で1位がひとりいれば3点入ります。本屋大賞の主旨で言えば3点までが「本屋さんが一番売りたい本」の候補作でしょう。
でも3点以上獲得した書籍の中に、残念ながら私の本はありませんでした。つまり海堂作品を「一番売りたい」と思ってくれた書店員は、投票した600人近い書店員の中にはひとりもいなかったわけです。
私の本も「売りたい」と思ってほしいという、私のささやかな願いは、こうして本屋大賞に関わった書店員さんたちによって、かくも無残に踏みにじられてしまいました。
ほんと、無神経な人たちです。
しかもこんなことを書くと、「ノミネートされなかったやっかみ」などと陰口を言われてしまう。やれやれ。(Byサイゾー2014年5月号『書店組織票で決定! 作家も苦言を呈する『本屋大賞』の出来レース』より)
そうじゃないことは、一連の文章を読んでもらえばおわかりでしょう。
本屋大賞のキャッチコピーは、こうした欺瞞も明らかにしてしまう。ほんとデリカシーに欠けています。
ちょっとむかつきましたが、サイゾーの記事は興味深い。版元の営業が本屋大賞のため書店員さんに接待しているとか、票を獲得するため作家と一緒に地方行脚しているとか、書店員から営業さんにパワハラまがいの強要があるとか......。
本当かしら。
いやはや、本屋大賞の内実は、かなりダーティなようです。
もっともサイゾーの記事の受け売りなので、私が裏付けを取ったわけではありません。
繰り返しますが私は、私の本を「売りたい」と書店員さんに思ってほしい。でも「私の本だけ一番売ってほしい」わけではありません。だから「書店員が一番売りたい本」というキャッチコピーは不愉快だと申し上げたのです。
そのコピーには書店員として大切なもの、「作家への思いやり」が欠けています。