海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2013.09.19 2013:09:19:10:27:50

厚生労働省がAiに予算をつけるかどうか注目せよ。或いはゲラ地獄の秋

 一方で、警察庁は法医学会と一緒になって、死因究明の費用を医療費から拠出させようと、懸命です。「死因究明は最後の医療」というフレーズを流行らせようと躍起ですが、解剖は「医学」であり、「医療」ではありません。医療とは「生きている人を医学を以て治療する」ということですから、死人に何かするのは「医療」にならないのです。医療費が削減されている今、死因究明は別の方面から出してもらうことが必須です。法医学会はAiに関し、医療現場に協力費をきちんと支払うシステムを提言してくれてもいいはずだと思うのは、私だけではないでしょう。おかげさまで私の作品を読み込んでくれた一般市民の読者の方には、こうした原則を理解している人が次第に増えています。それが今の希望でしょう。

 

 

 これまでは死因究明関連で不祥事が起こっても、仕方がなかったで済ませられました。でも優秀なシステムであるAiの有用性が明らかになった今、それを積極的に導入しようと努力しない厚生労働省の不作為があると、今後の問題が起こった時には責任省庁として糾弾されるでしょう。

 

 ただ、こうした「詐欺行為」にも似たやり口は官僚の常套手段で、しかも悪いことに彼らはそれを悪いことだと思っていない。その最たるものが復興予算です。復興のためといって税金を取りながら、復興を拡大解釈し屁理屈をつけて復興以外の部分に予算を使う。これこそ詐欺で、もし民間でこうしたやり方で集めた金を使ったら詐欺行為として立件されてしまうでしょう。でも官僚がやると罪にならない。

 

 同じ構図がAiにも言えます。厚生労働省の検討会から「小児死亡例全例Ai実施をすべし」という勧告を受けると、「Aiは死因究明制度の一部ですので、死因究明制度の充実に予算をつけます」と言って自分たちが構築したモデル事業の後継制度にカネを入れる。これは復興予算の詐欺的分捕り合戦とまったく同じ構図ですので、おそらくこれは官僚の基本姿勢なのでしょう。つまり、国民に大義名分を押しつけてカネを吸い上げた後は、屁理屈をつけ、実態隠蔽し、自分たちがやりたいことにカネをつける。彼らは、国民の目を欺くことを第一義に実施しているわけです。

 

 

 官僚の権限は強大で監視側の力は弱い。だから官僚はこうしたやり口で勝利してきましたし、これからも勝利し続けるかもしれません。でもそれは官僚に対する信頼が失墜し続けるということです。すると国力が弱まり、官僚はもともと国を基盤にしているので、官僚自身の力も弱まります。でも、大きな視野でものごとを考えるのが苦手な官僚には、そうした長期的な損得は計算できないようです。そしてただ、この瞬間の惰眠をむさぼれるように、これまでの継続に専心しているだけなのです。見えていないとたかをくくり、卑しいことをする官僚に対し、市民は冷ややかな軽蔑のまなざしを向けているわけです。

 

 もちろん官僚すべてがそうではありません。一生懸命業務に励んでいる官僚がたくさんいることも、私は知っています。ただ少なくとも、Aiに対して上記のような不誠実な対応をし続けている厚生労働省の、死因究明問題に関係している上層部の一部の人は、ここに述べたような指摘に相当するものと思われます。

 

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