講演会も現在、絞っている最中です。世の中が衰退に向かっています。活力を失うと閉鎖的になる。それは文学界も医学界も同じこと。今はとにかく、アウトプットを控え、休養が一番に思える今日この頃なのでした。
近況です。
1)「小説新潮」六月号の医療小説特集「読むクスリ――医療小説の誘惑」に「ガンコロリン騒動記」という短編と、「医療小説宣言」というエッセーを寄稿しました。特に医療小説宣言は今回、第二回日本医療小説大賞が受賞作なし、という結果になったと聞いて、驚いて緊急寄稿しました。ご一読を。
このことに関しては思うところもあり、報告しなくてはならないこともありますので、しばしお待ちを。
2)「週刊新潮」に『スカラムーシュ・ムーン』、好評連載中。相当の長編になること確定です。
3)雑誌「MonoMax」の取材を受けました。万年筆について、です。文豪気分です。
4)『モルフェウスの領域』、文庫化しました。また今月は『螺鈿迷宮』の新装版が出ます。上下巻ではなく、一冊に合本しました。合本は『ブラックペアン』に続いて二冊目です。『極北クレイマー』も、秋に朝日新聞出版社さんから合本で新装版にしてもらいます。残るは『バチスタ』のみ(笑)。
5)スイスから帰国直後の五月中旬、ベネッセの「進学フェア2013」で講演し、中学受験を目指している親子のみなさんおよそ五百人を前に、立ち見も出る中、お話ししました。「勉強する理由」などという私と最も掛け離れた演題で、どうしようかと思いつつ無事こなせたのは、一生懸命聞いてくれたみなさんのおかげです。『トリセツ・カラダ』と、続編で発売前の『トリセツ・ヤマイ』のサイン本を講演後に販売しましたが、合計で四百冊近くお買い上げいただきました。『トリセツ・ヤマイ』の執筆は大変で、小説三本分くらいの労力がかかりました。今は、長年のデューティが終わり肩の荷が下りた気分です。
6)『ニュースの深層』に出演しました。キャスターの津田大介さんが招いてくださったのです。久し振りのテレビ出演でしたが、津田さんとお話しできインスパイアされました。私の作品のファンだと言って下さり、文芸界で評価が低い、というか完全に無視された『イノセント・ゲリラの祝祭』が面白かったと力説してくれたのは嬉しかったです。津田さんの新書も拝読しましたが、私の物語の中でやろうとしていることを現実世界ですでにやっている、という印象を受け、感銘しました。やればできる。
同日に堀江貴文さんの収録もあり、ご挨拶させていただきました。堀江さんもアグレッシヴでシャープな方だな、という印象を受けました。
なお、この番組の内容は津田さんのメルマガで紹介される予定です。お楽しみに。私も楽しみです。
7)6月下旬、大阪で名門会家庭教師センター主催の講演会をしたのですが、真摯な気持ちで医師になりたいと考えている高校生や中学生がこんなにいる、と思い、胸が熱くなりました。こうした良き意思を守り育てるため、今、現場の医師は社会と闘わなければならない部分があると思います。未来の後輩のための闘いですね。名門会のはからいで、会場の方に『トリセツ・カラダ』、『トリセツ・ヤマイ』のサイン本をプレゼントもでき、未来の医療のために、少しは貢献できた気持ちです。7月21日は名門会家庭教師センターさん主催の講演会二回目、東京編があります。
8)7月31日、姫路文学館 夏期大学で「医療のこころ、物語のちから」と題して講演させていただきます。
9)ちょっと飛んで8月24日、九州文化塾で講演「医療のこころ、文学のこころ」と題して講演させていただきます。これは胸を張って言えるのですが、タイトルは似ていますがまったく違う内容になることは間違いありません。というか、同じ講演を再現できたためしがないのです。(スライドを作っても、です)。名門会家庭教師センターさんの講演も、大阪とはまったく違うものになってしまうことでしょう。すべてはその場の即興ですので。
あ、胸を張って言うことではありませんね。
2013年7月8日 海堂尊