海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2013.07.17 2013:07:17:16:42:38

たまにはのんびりと。(でもないか)

 ――政権交代直後、医学会の幹部から「医療事故調モデル事業を継続するように、仙谷先生に言って欲しい」と頼まれた。「何故ですか」と聞くと、「雇っている人を守らねばならないから」とか。不必要な事業が継続され、真摯な科学の議論が妨げられる。

 

 

 もしこの組織の存続が決定されたら、市民のことを考えない医学界上層部と官僚の隠蔽された談合があったことが間接的に証明されることになると思います。みなさん、日本医療安全調査機構の行く末に注目を。そしてそれに関して報道するメディアの言及にも。

 

 

 そんな中、七月七日には秋田大学整形外科学教室四十周年記念祝賀会に招かれて講演してきました。島田洋一教授率いる立派な祝賀会でしたが、秋田県副知事や秋田市副市長もお見えになった盛会で、秋田県医師会の常任理事の先生が中心になって、小児全例のAi実施のモデル都道府県として名乗りをあげてくれました。

 

 でも、実はここまではたいてい、たどりつけるんです。小児科学会も三月にはそんな勢いがあったけれど結局最後はナシのつぶて。だからここから先が勝負。またしても私は虚無感に囚われてしまうのか、それとも......。

 

 でも秋田では警察医が主体になってAiを実施してきたという実績があるそうですので、希望は持てそうです。他にも福島県医師会が中心となって、Aiの費用拠出を行政から勝ち取ったそうです。重要なのは、そうした現場の実績を集め、実態を把握し、現状をアピールすることです。その一方で、警察主導でAiの実施費用もはっきりしないうちに制度だけなし崩しに導入しようということも日本のあちこちでやられはじめています。

 

 ただでさえ厚生労働省を始めとする関連行政団体は、こうした動きや提案をシカトしようとします。そうさせないためには市民が声を上げ、その声を受け、担当者が実施していくことが必要とされる。そうした有志に水をやらなければ、その花はいずれ枯れてしまうでしょう。

  

 

 六月は塩野作品で一ヶ月近くローマ世界に旅行しましたが、社会制度というものに対し、思うところがありました。ローマの歴史は日本の今です。その中で示唆に富むフレーズを引用します。

 

「官僚機構は放っておくだけで肥大化する。それは彼らが自己保存を最優先するからで、他の世界と違って官僚の世界では、自己の保存も、自己の能力の向上で実現するのではなく、周辺に同類、言い換えれば"寄生虫"を増やしていくことで実現するのが彼らのやり方だ。ゆえに彼らに自己改革力を求めるくらい、期待はずれに終わることもない。官僚機構の改革は、官僚たちを『強制して服従させる力』を持った権力者にしかやれないことなのである。」「ローマ人の物語XIV キリストの勝利」より。

 

 これはユリアヌス帝が、コンスタンティノープルの皇宮改革に乗り出した時の反動に対する記述です。塩野先生の名誉のために申し添えておきますが、決して日本医療安全調査機構が"寄生虫"だなどとおっしゃっているのではないのでご注意を。

 

 いやいや、引用ってば、危険な行為ですね。

 

 

続きを読む 1234