私の作家としての評価は「多作で速筆」とのことです。まあ、年間平均4冊の刊行は多作と考えていいとは思いますが、先日『このミス』大賞作家のエース、中山七里先生から面白い話を伺いました。中山先生はこれから連載を順次七誌で開始するそうですが「一日5枚書けば一年で1800枚、600枚の長編が三冊出版出せる勘定です」というのです。私は毎日こつこつ執筆するタイプではないので、そんな計算をしたことはなかったのですが、なるほどなあ、と思いました。専業作家なら一日5枚など、ノルマとしてはあってないようなものではないでしょうか。週休二日にしても年間1200枚、二冊は書ける勘定です。ということは最低でも年二冊、作品を出版しなければ作家と名乗る資格はないのではないでしょうか、などということを考えさせられました。でもこういうことを書くと、また反感を買うのでしょうけれど。
こんな風に偉そうに言っている私も評価が低下中の部分もあり、たとえば昨年までは新潮文庫の「夏の百冊」に『ジーン・ワルツ』が入っていたのですが、今年は外されてしまいました。『ジーン・ワルツ』は売り上げも五十万部近くあり、映画化やドラマ化もされ、かつ、できれば若い学生に読んでもらいたい本だと思っていたのですが、このように厳しい評価がされてしまうわけです。かつて母校に夏百冊の文庫を贈呈したことを思うと、さみしい限りですね。
講談社さんと角川書店さんではフェアに残してもらっているようなので一安心ですが。
言いたいことは、読者のみなさん、面白いと思ったら本を買って下さいね、ということです。これが衰退しつつある文芸世界を救う唯一の方策です。それは一種のチャリティーみたいなもの、大道芸人にチップを払わなければ、大道芸人は食べていけず、結局その大道芸を見ることができなくなってしまうのです。