一方で、一部法医学者や、内科学会上層部、厚生労働省や警察庁の一部のアンチのように、Aiという言葉を忌避することに全力を傾注している人たちもいる。
少なくとも、Aiという言葉があったから、豊かな学術集会が成立し、Aiセンターが各地に創設され、そして研修会が催され、日本の死因究明制度の問題点があぶり出されたわけです。
同じ言葉に、唾を吐きかける人もいれば、そこから豊かな果実を収穫する人もいる。市民社会として、どちらが望ましい姿勢でしょうか。
官僚でも前向きに対応してくださる部署もあります。総務省が平成24年1月に『児童虐待の防止などに関する政策評価書』なる文書を公表しました。「この政策評価は、児童虐待の防止等に関する政策について、関係行政機関の各種施策が総体としてどの程度効果を上げているかなどの総合的な観点から、全体として評価を行い、関係行政の今後の在り方の検討に資するために実施したものである」という主旨の評価書で、『第3章 政策効果の把握の結果 2 児童虐待の早期発見 (1)関係機関における早期発見に係る取組』の46頁には参考項目として『死亡時画像診断(Ai:Autopsy imaging)の活用による児童虐待の見逃し防止の推進』という項目があります。
以下、全文を引用します。
「厚生労働省は、異状死や診療行為に関連した死亡の死因究明に資するため、平成22年6月『死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会』を立ち上げて、死亡時画像診断(Ai)活用方法等を検討し、平成23年7月に『死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会報告書』を公表している。
同報告書によると『小児の身体的虐待事例の場合、加害者の多くはその保護者であり、解剖に同意することは考えにくく、また、外傷を負った原因について医療従事者に申告することは考えにくい。このため頭蓋内出血や特徴的な骨折像の検出が可能である死亡時画像診断を、家庭内事故も含めた不慮の死亡例に対して行うことは、死因の救命だけではなく虐待事例の見逃し防止という観点からも有用性が高いといえる。』とされており、児童虐待の見逃しの防止についても効果が期待される。
なお、厚生労働省は平成22年度からAiの施設、設備の整備を補助する死亡時画像診断システム整備事業を実施している。