海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2012.01.10 2012:01:10:12:10:16

引きこもり続ける法医学会

 法医学者は画像診断の専門家ではない。なのに、こうした画像診断の研修に積極的に関与しない。学会全体ではAiという用語を使う事に対する批判ばかりが目立っている。このままでは、法医学会が扱うAi領域に、誤診や見逃しなどが多発し、それは捜査ミスや冤罪を誘発する原因になることでしょう。

 

 法医学会は、自らの姿勢を謙虚に見直すべきです。さもないと市民の共感と支持を失ってしまうでしょう。

 

 もうひとつ。法医学会関連で、Ai撮像をした場合、診断レポートを、遺族と市民社会に公開する枠組みを作るべきです。そうしないといい加減な診断をしている法医学者が野放しにされてしまい、やはり、犯罪見逃しに繋がってしまうでしょう。

 

 現在、警察庁や法医学会上層部は、解剖を増やせば犯罪見逃しが減る、という論陣を張っていますが、これは間違いです。今の、法医学会主体の犯罪関連死因究明制度に大きな落とし穴があるから、犯罪の見逃しが起こってしまっているのですから。

 

 にもかかわらず、ここで捜査現場の論理だけで一方的にAiに関する姿勢を決めてしまえば、自分たちだけは従来の業務スタイルを変えずに済む。それが法医学会のAiに対する基本姿勢に思えます。そうなるとこれまで法医学会が主導してきた死因究明制度で起こった問題、たとえば時津風部屋リンチ死事件や、パロマ湯沸かし器事件などが繰り返されることになります。

 

 メディアはそうした問題を、解剖制度が非力だから見逃したと誤認しています。でも時津風部屋事件では遺体は法医学教室で解剖されていますし、パロマ湯沸かしガス中毒死事件も、最初の例は東京都監察医務院で解剖されている。つまりそうした事件を見逃したのはひとえに、現存の法医学会の閉鎖体質に根ざしている。このことを繰り返し訴えてもメディアの理解力は低く、法医学会ヨイショ記事や報道が繰り返されるばかりなのです。

 

 

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