海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.08.08 2011:08:08:16:32:14

石巻警察署のAi導入拒否と映像化不能作品

 ドラマ『アリアドネの弾丸』は大変好評で、あちこちから評判を耳にします。私はドラマには口をはさみません。今回は、医療監修にAi情報センターの山本正二先生、そして法医学部門の医事監修にも、かつて素晴らしい法医学ドラマ作成に協力された都内法医学教室の諸先生方のご協力を仰いで制作されています。ちなみに撮影は先週クランクアップし、あとは編集だけ。打ち上げパーティも盛況で、大変楽しかったです。

 

 なぜこんな早いかと言えば、このドラマは昨年夏、『アリアドネの弾丸』の出版前から、プロデューサーさんがゲラを見てこの時期の放映が決めていたからです。一年近く脚本を練り、スタッフは周辺の取材も重ねました。物語の核に縦型MRIという新機種があるのですが、これは空想ではなく、現実に存在します。日本には新潟に一台だけあるのですが、その見学にも行ったり、ADR研究会で、Aiに関するシンポジウムがあれば、見学もされたりしたようです。死因究明に関わる警察取材も相当され、最近のドラマには珍しく、とても練り込まれた作品になっています。さらに言えば、原作とひと味違うのも、いつものこと(笑)。原作を読んだ方はまた別の楽しみ方ができる、大人のドラマに仕上がっています。

 

 というわけで、『アリアドネの弾丸』絶賛放映中です。

 

 よく作家の方たちは、物語を書くなら小説の特性を生かし、映像化が不可能な作品を書くとおっしゃる方もいるのですが、現在の映像技術と、原作を自在に変更するという自由度を以てすれば、映像化不能作品はまずありえません。でも、現実には映像化されにくい作品は存在します。たとえば『イノセント・ゲリラの祝祭』です。宝島社のシリーズ中、ただ一作、ドラマ化されていない作品です。どうしてドラマ化されないのでしょうか。私はこの本が、官僚の現実の姿を活写していて、特に具体的に国の審議会のヘタレ具合が書かれているからではないかなどと勘ぐっています。この本のタイトルがテレビ電波に乗ること自体、タブー視されているんではなかろうか、なんてね(笑)。

 

今の時代、実は映像化不能作品は存在します。それは体制批判の物語です。そう、自由社会を標榜する現在の日本で、ひそかに言論統制が行われている。そんな気がしてならないのです。ドラマ『アリアドネの弾丸』は、現在のタブー、警察批判を含んだ骨太の作品です。タブーに果敢に挑んだ関西テレビのスタッフの心意気を、見届けて下さい。というわけで、『アリアドネの弾丸』と一緒に、『イノセント・ゲリラの祝祭』をお読みいただけると幸いです。

 

 

 こういう声をあげ続けないと、たとえば東電OL殺人事件の捜査が杜撰だった、というような問題が次々に起こってきてしまいます。

 

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