法医学者は予算不足、人員不足を言い立てます。結局それは自分たちの領域にわずかばかりのカネがつけばいい、ということに収束してしまう。法医学者の育成を、と言っても、育成される間は今いる人たちの一部に、ちょっとしたカネが流れるだけで、実質の問題解決は先送りです。十年後、彼らの後輩が同じ愚痴を垂れ流すだけでしょう。
死因究明の拡充には特効薬があります。医療へ協力要請すればいいのです。解剖に関しては、病理医に協力要請すればいい。法医学者が病理医に頭を下げて、ご協力お願いします、と依頼すればいいのです。でも、そんな実効性のある申し出を、法医学者がしたことはありません。現に、この記事にも法医学者が足りないという声ばかりで、病理医の「び」の字も出てこない。解剖技術では法医学者よりも優れた面を持ち合わせている病理医にお願いすれば、即効性の問題解決になります。
それをせずに新組織の構築ばかりを言い募るのは、法医学者の上層部が、自分たちの領域のことしか考えていないことの表れです。
それはあまりにも貧しく哀しい発想です。
Aiに関しても同じことが言えます。一部法医学者は、Aiの診断を放射線科医に頼まなくとも自分たちでできると言い立てる。ただしこうしたことは首都圏の、ごく一部の法医学者にすぎません。でも困ったことに、一部法医学者が霞が関にべったりで、Aiの社会導入をミスディレクションしているのです。地方の法医学者はAiを放射線科医にお願いしたいと願っているのに。
ちなみに死因究明の政府作業部会を報じた日経記事には次のようにありました。
「全国に約170人しかいない解剖医を増やす対策や、薬物、毒物の検査拡充、歯形やDNA型のデータベース整備も協議する。警察庁は解剖関連の現行の法律の改正にとどめるか、新たな法律をつくるかについて厚生労働省などと協議する」
この記事ではAi、つまり画像診断についての言及は、あたかもないかのように報じられています。しかし現実にはAiについての法整備も協議されるらしい。
なぜ、Aiについて報道しないのでしょう。Aiに脚光を当てたくないからなのではないでしょうか。脚光を浴びるとAiに関する予算が、医療分野に流れていまうから、ではないのか。
その傍証に、解剖増やすべし、という政府作業部会のニュースは大々的に報道されましたが、翌日公表されたAi検討会の「Aiに関する費用を国がつけるべき、小児死亡例全例にAiを実施すべきだ」という提言は、メディアはほとんど無視しました。Ai検討会の報告は六月中に報告する、と事務局は会議の席上明言しましたが延びに延び、7月27日になりました。その前日の26日、唐突に政府作業部会のニュースが先行して発表されたのです。