今回の東電OL殺人事件の突然の再浮上は、「死因究明へ解剖率20%に引き上げ、政府が作業部会(日本経済新聞・2011年7月26日)」という記事と関係します。記事を読むと、警察庁が死因究明制度の再構築予算を自分たちの領域に引きこもうとしている、という意図が見えています。
今必要なのは、これまでのシステムの延長線上にある、捜査情報隠蔽体質の無鑑査システムではなく、新しい捜査監査システムです。でも、この政府作業部会がめざすものは、隠蔽体質の保全と、現行システムの焼け太りです。
警察が扱う異状死の解剖率は現在約10%です。しかし本来、これは全例解剖されるべきですが、できていません。それを20%と二倍に増やしても、問題は解決しません。死因チェックされない遺体が90%から80%に減るだけなのですから。
解剖を主体にしては、死因不明社会は解消しません。
ですがAiを主体にすれば、全例チェックも可能です。そうした時、そのチェックは専門家である放射線科医に委託しないと、画像診断の素人である法医学者が行えば、見落としをしてしまいます。
つまり政府の作業部会は、Aiを主体にした制度構築に舵を切らなければ、時代に合ったシステムを作ることは不可能なのです。でも、この作業部会を作った政治家はそのあたりをまったく理解していないようで、勉強不足としかいいようがありません。残念ですね。
異状死の解剖率を2倍に引き上げても、東電OL事件の冤罪疑いや、時津風部屋事件は防げません。それらの事件は解剖されていて、あのていたらくなのですから。
事件が起こった理由は、警察の情報閉鎖性にあります。だから、死因くらいはきちんと公開し、同時に捜査以外のチェックを受けるシステムを作るべきだ、というのがAiの根本精神です。
法医学会上層部は、チェックを受けるのがイヤだからAiという言葉にアレルギー反応を示すのです。それは、追試を逃げまくる劣等生みたいなメンタリティです。
大の大人が、困ったものです。
でも幸い、多くの市民がこのまやかしに気づき始めています。
一方、厚生労働省のAi検討会の報告書が7月27日にやっと公表されましたが、その中で明記されているように、2009年の解剖率は2.7パーセントです。
これが事実なのです。