そこで石巻市医師会の方々に席上、「Aiを実施したらいかがですか」と提案しました。そうすればたとえば過去の手術歴(大腿骨頭置換術とか、ペースメーカー挿入とかの遺体の内部情報が簡単に得られるので、人物同定にはすばらしい効力を発揮します。人物同定にAiが有益であることは、大阪大学法医学教室の飯野先生がかつて留学していた、オーストラリアのビクトリア州のシステムからも明確にわかっています。オーストラリアでは、山火事の際に、全例、焼死体にCTを実施し、人物同定に大変効果的だったという報告がされています。
石巻市医師会の先生方は、Aiの導入にはすぐに同意されましたが、「費用拠出が難しいかも」と本音をおっしゃるので、視察に同行していたAi情報センターの山本代表理事に当たってもらったところ、CT検診車を派遣する(株)フリールの社長のご厚意で相当に低い料金で対応してもらえることがその場でわかりました。
それでも費用は発生してしまうので、費用については、一ヶ月分を私が寄付することをその場で決めました。これで機器の算段や費用問題は一気に解決です。
読影に関しては、Ai情報センターの山本先生がボランティア対応することになりました。
石巻市医師会の舛会長はたいそう喜ばれ、ただちに石巻の所轄警察に、医師会と検案業務の補助としてAiを導入したい、という申し出をしました。石巻市の所轄警察はそれを宮城県警に上げて、現在判断を待っている最中です。
しかし、この決断は一刻も早くしていただきたいものです。こうしている間にも、毎日遺体が発見されています。このAiの導入決定が一日遅れれば、それだけ遺体の情報を得る機会が減ってしまいます。
検査を実施する医師会の要望で、その費用問題も解決している。しかもAiが人物同定にきわめて有益であることは、法医学会内部でさえ、共通認識になっている。
これで宮城県警が判断を遅延させる理由はまったくありません。