海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.05.20 2011:05:20:22:32:34

法医と警察はAiただ乗りを強行するつもりなのかしらん。

 法医学主導の研究会メンバーは国費で諸外国の制度を視察したようですが、見たいものしかみないという、残念な視察に終わっています。たとえば英国の解剖制度について、コロナー制度が敷かれ解剖率は45%という記載がありますが、英国では2011年度から解剖の代わりにMRIを導入することが昨年夏に決定しています。それにはひと言もふれていません。こうした提言を出すとするならば、それは単に勉強不足ということでしょう。

 

 ちなみに私が批判する、「厚生労働省の公募科学研究・深山班」の報告書は実に興味深い。「平成21年度総括・分担研究報告書」に、深山班で検討した症例の検討結果が掲載されているのですが、東海大学の司法解剖症例の結果がとんでもない。国費で行われた分担研究で、東海大はモバイルMRIを借用、司法解剖症例に実施しましたが報告書には、司法解剖症例結果は7例全例が「臨床診断:鑑定中、画像の有用性分類や一致水準など、すべての報告項目:検討中」となっているのです。

 

 これは公募科学研究の公式報告書で、締め切りもわかっていたはず。この不誠実な結果報告を、東海大学法医学教室の研究担当者は、税金を払う市民社会や、そうした結果を参考にしようと考えている学術団体に対し、どう釈明するのでしょう。

 

 社会制度への提言を行ないながら、一方で検査の基礎情報すら開示しない。これでは誰も監査できません。市民社会は法医学会の提言に投資したいとは絶対に思わないでしょう。

 

 一研究班の、たった七例の症例でさえ、怠慢で検索が間に合わなかったか、意図的に隠蔽したかはわかりませんが、対応できない程度の地力しかない集団が、自らを顧みずに大言壮語をぶちあげた。私には法医学会のお寒い状況がこの提言と、Aiという協力者に対し無視をきめこむその姿勢から透けて見えて仕方がないのです。

 

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