犯罪死の見逃しを防ぐため、死因究明制度のあり方を検討する警察庁の有識者研究会は28日、都道府県単位の国の解剖機関の設置や遺族の承諾なしで解剖を実施できる新制度の創設などを提言する最終報告書をまとめた。(中略) 最終報告書では現行の解剖制度を踏まえ、「犯罪性が不明な死体の解剖制度が構築されていない」と指摘。従来の司法解剖と行政解剖に加え、新たに法医解剖制度(仮称)を創設し、犯罪性の不明な死体について遺族の承諾がなくても解剖できるようにするとした。
さらに、この新制度や解剖医の不足に対応するため、国の機関として各都道府県に「法医学研究所(仮称)」を設置。現在、解剖にあたっている医師は約170人だが、解剖医の育成制度を早急に構築し、当面は2倍、将来的には5倍にするよう求めた。
また、法医学の知識が十分とはいえない医師が検案にあたり、死体の外見検査のみで死因などを判断しているケースがある点をとらえ、解剖の必要性の有無などを判断する医師を公務員として採用する「専門検案医制度(仮称)」の創設を提案している。
このほか、薬物検査やCT撮影が遺族の承諾なしにできるよう法律を整備する▽身元不明死体の歯科所見とDNA型のデータベースを構築する▽窒息死の所見のある死体などは原則として検視手続きをとる−ことも提言している。(中略)
◆ 多大な予算 実現に高い壁も努力を
研究会の提言を実現するためには新たな法律の制定に加え、多大な予算が必要になる。研究会の委員も「財政難」が最大の障害と認識しており、実現の可能性が決して大きいとはいえない"理想論"を打ち出すことの是非が議論されたという。それでも、委員らは「あるべき姿」にこだわり、「犯罪死の見逃し防止という目的を達成するための取り組みが促進されることを強く期待する」と言及した。その柱の一つの国の解剖機関の新設も、まずは大学の法医学教室や監察医務院などに機能を与えた後、独立するという段階的措置まで示した。
これまで、犯罪死の見逃しは脆弱な現行制度のもとに「警察のミス」で済まされてきた。東日本大震災で財政事情はさらに厳しくなったが、今回の研究会は、厚生労働省や文部科学省など関係省庁を議論に巻き込んだことに意義がある。提言を「絵に描いた餅」にしないよう、各省庁が実現に向けて少しずつでも努力することを期待したい。(楠秀司)
要は「法医解剖」という新しい解剖制度を作ろう、そして国の機関として「法医研究所」を作ってよ、に集約されます。提言は法医学者の内輪の会議で策定され、「専門検案医制度(仮称)」の創設を提唱しているのに、医療現場で解剖に従事している病理専門医の存との整合性には言及していない。この提言が、法医学者のギルド的な自己権益追求の提言になっている証です。