しかし理事会が決定したことを、下部団体の運営委員会が騒いで押し戻すなんて、そもそも「日本医療安全調査機構」なる組織がきちんとしたシステムの一般財団法人ではないことを内外に広くアピールしてしまったようなものです。こんな組織が、外部の病院の医療事故問題をハンドリングなどできるのでしょうか。自らの組織でさえハンドリングできないのに、他の組織の危機管理など、できるはずもありません。
樋口範雄氏は「これでは『医学会が第三者機関設立をあきらめた』ととられかねない」、そして病理学会の黒田誠教授は「世界に『日本は医療安全に対して何もしない』と言っているようなもの」と憤っておられるようですが、これは一種の詭弁でしょう。『日本は医療安全に対して何もしない』などとは誰も言っておらず、単にできの悪いモデル事業を中止するだけのこと。医療安全についての第三者機関は、各地域単位に構築されるAiセンターに併設する医療安全室で稼働可能です。
単に、解剖を主体にしたシステムでは、医療安全は達成できない、というだけのことなのです。
そうした外部の意見に耳を傾けてこなかったので、こうした反応になってしまうのでしょう。ならば一度、検討会に私をお招きいただければと思います。そうすれば委員の先生方に納得のいく説明をしてさしあげることもできますので、是非ご一考を。
このニュース、よく読むと大変興味深いものです。そもそも昨年、いきなり日本医療安全調査機構が立ち上がった時には、いったいこの一般財団法人はどのような財源を当てにして創設されたのだろうと不思議に思っておりましたが、こうなってみるとやはりモデル事業のための国の予算の受け皿組織だったのではないか、という疑念が強くなります。というのは、「国からの補助金に頼る事業の在り方を問題視する声が上がり、事業に参加している各学会から資金を出し合うことで、自主独立の道を模索すべきという意見も出た」という記述があるからです。参加各学会が資金を出し合うことすら検討せずにこうした新組織を構築した、ということが露になったわけで、この組織が昨年3月にいきなり創設されたということは、何の実績もない一般財団法人に補助金が入るあてがあったことを意味します。これでは厚生労働省の側からみれば、実績のない一般財団法人に補助金を入れるという密約があったのではないか、などと勘ぐられかねません。その額が一億円というのですから、あきれてものがいえません。納税者のひとりとして、断固、抗議したいですし、それは市民みんなの抗議であるはずです。