海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

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2011.04.08 2011:04:08:13:44:48

「衣食住」から「医・職・自由」へ。そして寄付をして公言しよう。

被災地東北沿岸部はまだまだ大変なようですし、原発問題も大事ですが、あちこちで復興に向けた動きが始まっているのは大変心強い。それにしても医療従事者の現場での奮闘は素晴らしいものでした。今回の災害ではメディアもきちんとそうした医療行為を取り上げ、称賛しているようで、まずは妥当だと思います。

 

これから被災地に必要なのは、人間の基本的な必要要件である「衣食住の確保」です。そして地域社会を復興させる次のステップの「い・しょく・じゅう」が必要になります。

それは、「医・職・自由」です。

 

DMATを主体とする救命救急の初動は素晴らしかった。また、法医学会を中心にした検案体制の初動もしかり。放射線監視のためのREMAT初動もしかり。しかし次にはふだんの「医療」が大切になります。不安定で劣悪な環境ですからただでさえ病気になりやすい。なので命を守るために、しっかりした「医療」が最優先課題になるでしょう。

 

「職業」は雇用の確保で、地域経済を自立させていくために重要です。経済的な自立がなくては復興にはなりません。職の創出には、上記の「医療」を絡めることが一番の早道でしょう。何しろニーズが高いのですから。

 

最後の「自由」。平穏ならば当然享受できる楽しみが、被災した人たちにはできません。しかし長く暮らすにはこの担保が必須で、そのために必要なのはお金でしょう。というわけで、今は寄付が重要な資源になるはずです。もちろん、行政の裏付け対応があってこその寄付、ですけど。

 

 

さて、今回の東日本大震災に当たり、最新刊『ゴーゴーAi』の印税全額を、講談社を通じ被災地に寄付しました。

 

それだけなら以前一度書いたので、再度書くつもりはありませんでした。しかし寄付を決めた後、ネットを見ていると、少々気になる発言が散見されたのであえて書くことにしました。

 

それは「寄付をするなら黙ってやれよ」という発言です。

 

実は、こうした発言が日本を貧しい国にしてしまう、と常々思っていたので、今回はそうした発言をする卑しい人々の心根を分析しようと思って書くことにしました。

 

「寄付をするなら黙ってやれよ」と発言する人はふた通り考えられます。

 

ひとつは、「自分は黙って寄付をした。だからお前も黙ってやれよ」という人です。しかし実際はこうした人はきわめて少ないはず。黙って寄付をする人は、寄付という行為自体が重要で公言しようがすまいがどっちでもいいと考えるはずだからです。

 

他人の行為をとやかく言うより、実際の寄付行為の方が大切だと考える人が、黙って寄付をする。だから公言して寄付をする人に対しては、寄付をするという行為を行う点で同じ属性の仲間だとシンパシーを感じこそすれ、公言するという些細な部分を取り上げてわざわざ糾弾するはずがない。そんなセコい心情の持ち主なら、「黙って寄付」なんていう崇高な行為は絶対にできません。

 

第二のグループは、自分が寄付をしないで上記の非難をする人々です。この人たちがなぜそんな発言をするかというと、寄付行為の尊さを感じながら、できない自分の心根が後ろめたく、そうした思いをさせる相手を攻撃してしまうのです。

 

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