海堂尊 - 第四回『このミステリーがすごい!』大賞(『このミス』大賞)大賞受賞作『チーム・バチスタの栄光』の著者

『海堂ニュース』最新ネタ満載!

2010.03.09 2010:03:09:18:42:57

ふたつのAi関連ニュースが示す、官僚主導の死因究明制度再構築の危うさ

【ニュース2】「異状死死因究明モデル事業」と「死亡時画像診断システム整備事業」by厚生労働省 (2010/03/1メディファックス)より引用

 厚生労働省は2010年度から行政解剖の体制づくりを支援する「異状死死因究明モデル事業」を新たに実施する。2月26日の全国医政関係主管課長会議で、実施要綱と交付要綱の案を説明した。厚労省によると、監察医制度が適用されている東京23区、大阪市など以外では、異状死の死因究明のための解剖は広く実施されているとはいえないのが現状。このため法医学教室との連携などで独自の解剖を行っている地方公共団体を財政支援する。補助基準として年間の解剖取り扱い件数が「おおむね30件程度」などを挙げている。1カ所の事業費の上限は5546000円。全国10カ所程度を想定している。

  iの整備事業も実施

    同モデル事業では、死亡時画像診断(AiAutopsy Imaging)を使用する場合の経費も含む。厚労省は「死亡時画像診断システム整備事業」も併せて実施する。死亡時画像診断の画像の撮影、診断、管理、教育研修の体制整備が計画されていることが条件。同事業で整備を行った死亡時画像診断システムについては、毎年度12月末日現在の稼働実績を報告することも義務付ける。

 

○ さて、これは厚生労働省が発信したのですが、いきなり「異状死死因究明モデル事業」なるものが立ち上がったので驚いています。厚生労働省は本当にモデル事業が好きですが「医療関連死における」という枕言葉がついた「モデル事業」との関係性はどうなるんでしょう。だいたい「医療関連死における死因究明制度のモデル事業」は、5年の年月をかけ年間1億円以上の予算を食いながら、結局モデル構築ひとつできなかった大失敗企画なのに、まったく反省せずに同じ構図で新たなモデル事業を、検討会もせずに構築しようだなんて、厚生労働省のやっていることは論理破綻極まれり、です。

 そもそもこれは誰の発案なのでしょう。謎が謎を呼びます。Aiの整備事業も行なう、とありますが、ひどい話です。病理学会試算では解剖一体あたり諸費用は25万円。このモデル事業は行政解剖に対する援助が主体ですから、一カ所30件の援助とすると、それだけで25万円×30体=750万円と、補助金額を解剖だけでオーバーしてしまう。おまけに異状死は年間15万体発生してるのに、モデル30体を10カ所なんて300体分。つまり対応するのは0.2パーセント分だけ。これをアリバイ仕事と言わずしてなんというのでしょうか。

続きを読む 1234